サラリーマンが、わくわく感をもって仕事をする、もしくは充実感をもって仕事をするためにどうしたらよいでしょうか。
いろいろな人が現状に満足しきれず、悩んでいることだと思います。
ある会社の社長になり、将来の成長を目指して事業を変革する中で、多くの課題を解決するために方策を出し、一つずつ課題を解決していきました。
このような中、私は社長として、社員と会社が成長していく姿を見ているときに、挑戦し続けることができる醍醐味も味わうことができ、充実感を持つことができました。
社長に就任して数年たつと、この醍醐味は社員にも味わってもらうことができるのではと思い始めました。
社員の人たちに、その醍醐味を味わってもらうために必要なことは、熱中するほどに仕事にかけるものを持つことが一つ。
そして、いま一つが、大きな目標や難題に挑戦し、自ら考え、判断し、行動する機会を持つことだと思います。
池井戸潤氏もその著書で、経営者なり、サラリーマンが、自分の持ち場で、いかに醍醐味を感じることができるかについて書き記しています。
今回は、最初のテーマの“仕事にかけるものがあることで醍醐味を味わう”ことができた例を紹介します。
経営者もサラリーマンも何かにかけるときがある
絹を加工する特許を持つ元加工メーカーの社長、飯山を説得し、一緒にシューズの開発に挑み始めました。
ソールの開発が始まり、宮沢紘一の息子が、加工メーカーの飯山
「陸王」の主人公は、埼玉県行田市にある老舗旅業者「こはぜ屋」の社長、宮沢紘一です。老舗ではあるものの、足袋の売り上げは年々細り、将来に展望はありません。
そこで、宮沢社長は、ランニングシューズ“陸王”の生産販売に乗り出すことにしました。
何とか既存のランニングシューズにない特徴をもたせたいと思っていたところに、絹を加工してできる材料に出会いました。
この材料をシューズの底、ソール(靴の本底)に使うことで、軽量で耐久性も良いシューズの開発が可能ということで、陸王の開発を決断しました。
絹を加工する特許を持つ元加工メーカーの社長、飯山を説得し、一緒にシューズの開発に挑み始めました。
ソールの開発が始まり、宮沢紘一の息子、大地が、加工メーカーの飯山を手助けすることになりました。
大地は他企業へ就職するつもりで面接を繰り返していますが、父親が経営する足袋屋に残る道もあり、自分の今の立場に疑問を抱いていました。
ここで紹介する一節は、そんな悩みを抱える大地が、なぜ飯山ほどの人が会社をつぶすことになったのか強い関心があり、そのことを父親に問いかける場面です。
(大地)「経営判断ミス、ってこと?」
「そうともいえるかもな」
宮沢はこたえる。「だけど、経営ってのはさ、いつも先行きが霧に包まれてる。
ウチだってそうさ。『陸王』のために、ここまで人や金を注ぎ込んでいるけど、それでうまく行くとは限らない。ある意味、賭けだ」
「賭け、か。そういうことをしたくないから、みんな大企業へ行くのかな」
大地の言葉は、妙に宮沢の心に染みる。
「いや、違うと思う」
そういうと、大地の少し意外そうな顔が振り向き、問うような眼差しが向けられた。
「どんな仕事してたって。中小企業の経営だろうと、大企業のサラリーマンだろうと、何かにかけなきゃならないときってのは必ずあるもんさ。
そうじゃなきゃ、仕事なんかつまらない。そうじゃなきゃ人生なんておもしろくない。オレはそう思うね」
「だけど賭けに負けるかもしれないじゃん」
「そうだよ」
宮沢はあらためて大地を見た。「だから人生の賭けには、それなりの覚悟が必要なんだよ。
そして勝つために全力を尽くす。愚痴をいわず人のせいにせず、できるこことはすべてやる。そして、結果は真摯に受け止める」
(池井戸潤著 陸王)
「サラリーマンだって、何かにかけければならないことがなければ人生なんて面白くない」。
宮沢の語る言葉は、まさに、私が会社を経営していたときに、社員のモチベーションを上げるために、見つけた言葉でもありました。
給料は一義的な満足
私が、ある土木建築設計のコンサルティング会社の社長に就任したときの経験です。
社長に就任したときは、会社が停滞しており、その後の成長見通しもなく、社員の中には給与などの処遇面での不満がありました。
このため、どうしても社員のモチベーションが上がらず、何とか社員にやる気を起こしてもらうことが社長としての最初の仕事でした。
生活に不安があるという社員が多く、まずは処遇を改善することが大きな課題でした。
経営改革を進める中で、業績が上がれば、まずは社員の処遇を見直す、ということで会社経営を進めました。
会社の変革をはじめて1,2年でその成果が出はじめました。停滞期を抜け出し、処遇の問題も社員の不満をなくすことができるレベルになりました。
ちょうどそのころに、社員に対して、会社への満足度調査を実施しました。
すると、私が社長に就任した時点より、社員の満足度が一段高いレベルになってきたことを感じました。
さらに、社員の意識が、自分が担う仕事に向くようになり、これまでのように、ただ上司からの指示で仕事をすることに対し、満足を覚えない状況であることも明確となりました。
上司から仕事を指示され、受動的に仕事をするのではなく、自らの意志でその仕事に参加し、貢献できているという達成感を求めるようになりました。
この満足度調査の結果から、社員のモチベーションをさらに上げるためには、さらなる方策が費用であることがはっきりしました。
達成感を得るには“仕事にかけるもの”が必要
このような社員の意識の変化に対応し、社員のモチベーションの向上のため、いくつか方策を考えました。
その中で、一番に力を入れた方策が、社員一人一人が経営者となり、自分が参加するプロジェクトを動かしていく仕事のやり方に変えていくことでした。
これまでの部、グループ単位で仕事をするやり方にある方法を追加しました。
市場に出す商材の開発から顧客に販売するところまでの一連のプロセスを、一つのプロジェクトとして、業務を進めてもらうことにしました。
狙いは、社員一人一人が、そのプロジェクトの目標達成のために、課題は何か、何をすべきかを考え、方策を立て、スケジュールを組み、社員に能動的な行動を取ってもらうことでした。
さらに、活動をスタートしてからは、成功もしくは失敗の結果が出るまで、プロジェクトのメンバーに任せました、
顧客に接する部門では、交渉のなかで難しい課題が出ることもあったと思います。そのようなときも、自ら考え、判断し、行動することを徹底しました。
必ずしも、すべてのプロジェクトが成功に結び付くわけではありませんでした。しかし、そのプロジェクトに参加した人たちの多くは、仕事の面白さを改めて感じてくれたようです。
そして、その経験をした社員が、次のプロジェクトに立ち向かっていく姿勢に、手ごたえを感じました。
まとめ
サラリーマンが本当に、自分の仕事に醍醐味を感じるのは、やはり、自分にとってかけるものがそこにある時であると思っています。
池井戸氏の作品と私の経験から、その第一段階として、熱中できる仕事を見つけることが大切でることを紹介しました。
さらに、その仕事を成功に導くためには、自ら判断し、行動する、能動的な仕事のやり方が大切であるとことも紹介しました。
そして、そのような形で、仕事を進めていくと、必ず多くの難題に出会うことになり、その難題を超える努力が成果に結びついてこそ、醍醐味を味わうことができると思っています。






