モチベーションをアップしたいとき

外の世界を見ることで成長する

12月に入り、寒さが厳しくなるとあっという間に林の葉が落ちてしまうと、今までとは見慣れない景色が目の前に現れます。

風一夜 隣家現わる 枯れ野原

さて本題です。

仕事に従事しているときなど、ある課題を解決する際に自分の世界に閉じこもってしまい、外の世界に思いがおよばなくなってしまうことがあります。

商売を仕事にしているときなど、自分の世界に籠ってしまうことで顧客のニーズを把握できず、どうしても売り上げを伸ばせないことがあります。

このようなときにどのようにすれば、その世界から脱却できるのでしょうか。

今野敏氏はその作品の中で、外の世界を見ることの大切さを書いています。

私も、ある会社の社長を務めていたときに、この外の世界を知ることの大切さを実感した経験があります。

自分の世界で商売を続けていたために売り上げが伸びず、停滞している会社の状況を変えるため、外の世界で商売をすることを決断したときのことです。

 今回は、今野敏氏の作品と私の経験から「外の世界を見ることで、新たな能力が磨かれる」という点について事例を紹介します。

世界を広げることが必要

今野敏氏の作品「遠火」は、警視庁強行犯係・樋口顕のシリーズの最新作です。

この作品は、ある少女の死体遺棄事件から始まります。

この事件を担当することになった捜査一課の樋口班は、遺棄された死体が見つかった場所の管轄である青梅署と、事件の発端となった、少女グループが活動する渋谷署の刑事とともに、事件の解明に努めます。

遺棄された少女は少女グループによる売春組織の一員であることが判明し、その関係から事件の真相を樋口は説き明かしていきます。

その事件のなかで、樋口は、売春グループの代表として活動を続けていた少女が殺人事件に関与していることを意識し、取り調べを担当することになりました。

今回紹介する場面は、この取り調べにあたり、少女のこれまでの生き方に悲憤を感じた 樋口が、被疑者にかけた最後の言葉をめぐっての、樋口刑事の部下、同僚が交わす会話です。

 藤本(樋口班の唯一の女性刑事、樋口の取り調べに同席)はその場に残っていた。立ち尽くしたまま樋口のほうを見ている。

樋口は彼女に尋ねた。

「何だ? 何か言いたいことでもあるのか?」

藤本は、一瞬の戸惑いを見せた後に言った。

「あの一言は、成島喜香(女子グループの代表)に刺さったと思います」

樋口が彼女に言った(取り調べの)最後の言葉のことだろう。

 「あれしか言うことがなかった」

「成島喜香は、自分の中しか見つめていなかったのだと思います」

「俺も同じようなことを感じていた。自分で作った世界で生きているのだろうとーーーーー」

「でも、あの一言で、彼女は係長の世界に眼を向けたんです」

「そうかなーーーーー」

氏家(樋口の友人で警視庁の少年事件課の係長。取り調べには同席せず)が尋ねた。

「この人、何を言ったんだ?」

藤本がこたえた。

「私は悲しい、とーーーーー」

茶化されるかと思ったら、氏家は沈黙した。

樋口が戸惑っていると、氏家は言った。

「藤本の言うとおりだ。その言葉は、成島喜香に届いたはずだ」

「何も考えずに、そのとき感じていたことを言っただけだ」

「だからこそ届くんだよ。作った言葉や飾った言葉は、少年には通じない」

「あの瞬間に、彼女の世界は広がりました。だからきっと、これまでのことを真剣に考えてくれると思います」

藤本がそう言うと、」氏家がうなずいた。

「俺もそう思う。目が外を向けばこれまで見えていなかったものが見えてくるからな」

樋口は言った。

「彼女は変わってくれるということか?」

氏家がこたえる。

「人間、そう簡単には変わるもんじゃない。変わるんじゃなくて考えを深めるんだ。それが成長ってことだよ」

氏家と藤本のおかげで、樋口はすこし救われたような気持になっていた。”

(遠火 今野敏著)

社員の意識改革―外の世界で商売をする‐

私が、ある土木建築系の設計コンサルタント会社の社長に就任したときの経験です。

大きな会社の子会社であることから、仕事はその親会社からの委託が多く、それ以外の企業からの仕事は三分の一にも満たない状況でした。

私が赴任する前から親会社の収支状況が悪化し、親会社からの受注が激減することが予想されました。

私は、その会社に入る前に3年間ほどガス事業を展開する会社の役員を務めていました。

そこでの経験が、コンサルタント会社の収支を改善する上で役に立ちました。

そのガス会社は、天然ガスを生産し、地域の企業にそのガスを卸すことを事業の柱としていました。

私は、ガスの生産設備を所有する事業所の所長を務めており、安全に、しかも絶えることなくガスを生産し、顧客に届けることが使命でした。

その事業所では、生産設備と顧客との中継設備などがその地域に点在し、さらに、それら設備と顧客を結ぶパイプラインが地域全体に張り巡らされていました。

創業以来数十年が経過し、設備の古いものもあり、いくつかの技術的な課題がありました。

その中でも一番に大きな課題が、首都圏を襲う地震の発生が危惧される中での、設備の

耐震性を評価することでした。

設備の耐震性評価をどのようなコンサルタントに頼んだらよいか、会社内で議論している中で、その仕事をお願いしたのが、後に私が社長を務めた土木建築関係のコンサルタント会社でした。

2010年の秋に耐震性評価の報告書が上がってくると、早速に、どこが危ない箇所であるか関係所員を集めて検討を始めました。

2011年3月11日の東北大震災が東北から関東地域を襲ったのはまさにその検討をスタートさせた直後でした。

ガスの生産設備やパイプラインにも被害を生じましたが、その被害箇所は、まさに耐震検討をお願いしたコンサルタント会社が指摘した箇所でした。

その実績に、当時のガス会社の社長も、「これほどまでに精度良く評価できるとは知らなかった」と話していましたが、私自身も、その会社の技術力がそれほどにまで卓越したものであったかを改めて認識した次第です。

そのような体験をもって、コンサルタント会社の社長に就任しました。

今まで親会社との関係が強すぎて、親会社以外の会社に営業をすることを積極的に進めることがありませんでした。

そこで、会社の売り上げが減ることが想定されるこのタイミングで、前の会社で実感したコンサルタント会社の強みをもっと外に向けて売り出していくことを決断しました。

しかし、今まで、親会社に頼り切っていたこともあり、なかなかに、社員は外の世界に出ることに消極的でした。このため、まずは、「外に向かって商売をしよう」ということで、社員の意識を徹底的に変革することにしました。

社員全体に向けて話をしたり、グループ単位で懇談会をしたり、徹底的に外に出ることの必要性を話し続けました。

そのうちに、前向きな社員から外に打って出る計画が聞こえるようになり、技術的な力量を認めてくれた会社からの受注が入るようになりました。

これらの事例をさっそく社員に伝え、より一層外の世界に打って出ることを奨励しました。

その結果、1年もすると、外からの受注が増え始め、社員もやればできる、という意識にかわっていきました。

自分の会社の中だけの思いで仕事を勧めるのではなく、外の世界を知ることで、社員のいい気が変り、それに伴い、外のお客様からの受注が増えた事例でした。

まとめ

同じ会社にいると、その会社のやり方やこれまでの技術の蓄積もあり、ある課題に直面したときに、これまでの知識、技術の中に閉じこもってしまい、かえって課題解決の発想の妨げになることがあります。

「まさに井の中の蛙大海を知らず」の状況に陥ってしまっているのが原因であることが多いかと思います。

このようなときの打開策として、今いる自分の環境を外の目線で見直すことが必要であると思います。

積極的に、今の世界から飛び出す勇気を持ち、飛び出したなら、しゃにむにその世界のことを吸収していく努力、まさに他流試合に挑むことをお勧めします。