モチベーションをアップしたいとき

ジョブ型社会の中で社員のやる気の高め方 

企業では、ジョブ型給与体系を取り入れるところが多くなりました。

これまで、年数が経てばそれなりの職位と処遇を与えられた終身雇用制度の世界が大きく変わる中で、社員のやる気、社員の育成が企業にとって大きな課題となっています。

日経新聞では、ジョブ型への移行にあたり、若手の育成のあり方の大切さと、そのための管理職のあり方について紹介しています。

私も、設計関係のコンサルタント社長に就任した時に、事業を拡大し、社員の能力とやる気を向上させるためにいろいろ試行錯誤してきました。

今回は、日経新聞の記事と、私の経験から「ジョブ型社会の中で社員のやる気をいかに高めるか」について事例を紹介します。

管理職は人材育成に力を

 2023年5月3日付の日経新聞の中外時評では、「ジョブ型が迫る管理職改革 プレーヤーよりも育成役に」と題して、ジョブ型に企業の仕事のやり方が変わる中で、管理職が果たす役割の変化について論じています。

 その記事では、これまでの終身雇用で行われていた、部下の育成は自分の姿を見せる、もしくは、仕事で活躍した平社員を管理職に登用することでモチベーションを上げて育てる仕組みがジョブ型で変わっていかなければならないこと。

また、その中で、ミドルクラス管理職の役割が大切であり、かつ、その管理職に負荷がかかっていることを記載しています。

 また、記事の中では、いくつかの企業のジョブ型社会での人材育成について事例を紹介しています。

 “リコーの山下良則会長は「管理職を支援職という名前に変えてもいいと思っている」とまで言う。同社もジョブ型導入を機に、管理職研修を労務管理中心から育成重視へと昨年度に転換した。今夏からは部下の潜在能力を見極めて成長を後押しする手法についても学んでもらう。

 自分がこなせる仕事だけを与えられているのではないか――。現状に物足りなさを感じる若手の声もあるという。「ぬるく対応するのではなく、部下にもう一歩伸びてもらうよう挑戦する管理職でないといけない」と人事部の辻真樹子タレントディベロップメントCOE室長は指摘する。(日本経済新聞 2023年5月3日 中外時評)

 

 この事例で示されるように、研修を育成中心に進めること、また、若手にやる気を出させるため、一つ上の仕事を任せることの大切さが重要な点となっています。

一つ上の仕事を任せることでやる気を起こさせる

私が、ある設計関係のコンサルタント会社の社長となり、売上高の低下が見込まれる中で事業の立て直しを図る目的で、全社的な行動計画として、社員一人一人が会社の経営を考えて行動することを目指した“全員経営”を始めました。

このときに重視した点が、会社組織の階層ごとに今までとは違った取り組みを進めていくことでした。

7~8ある事業本部の本部長に始まり、その下の部長、グループマネージャー(GM)。そして一般社員を対象に、階層ごとに進めたのが、“一般職から本部長まで、それぞれの役割の人が、一つ上の職位の仕事を担う”ということです。

一つ上の仕事を任せることで、これまでの人材育成では得られない、技術、能力を身につけることができるようになることを目指しました。

また、合わせて高い技術、能力を必要とする仕事に挑戦し、それを達成することにより、仕事へのやる気を高めることを意図しました。

このような全員経営を2年ほど進めることで、全社員とはいきませんでしたが、その中から、次を担える人材が生まれてきました。また、多くの社員がやる気を持って仕事をする姿を見ることができるようになりました。

ここでは、本部長から社員まで、一つ上の仕事をするためにどのようなことを方針としたかについて、具体例を紹介します。

本部長には経営上のリスクへの取り組みを重視としました。

会社の経営に影響するリスクを常に意識して、リスクが顕在化する前にその対応策を考え、事前に対処する準備しておくことは、経営環境が著しく変化する現在においては、とくに会社経営の重要な点です。

このため、突然顧客の経営環境が変化するようになったときに、迅速にその変化の中で生じる経営上のリスクを洗い出し、スピード感を持って対応することを各本部長のひとつの任務としました。

部長が担う一つ上の仕事はどうでしょう。

親会社からの受注業務に慣れていたことから、依然として、仕事のやり方がこれまでのように親会社からの仕事を受動的に実施していたときのマネージングにとどまっていることが気になりました。

このため、まずは、部長職にあたる人が、実面を担う軍曹役である GM の力量を鍛え、能力あるGMを育てることを新たな部長の職務としました。

また、部下に仕事を委ねることにより時間が出来たことで、部長として一つ上の仕事を任せることとしました。全社大のビジョン、各本部のビジョンの達成を目指し、部長自らが本部長に代わり、判断し行動することを次の職務としました。

GM はどうでしょうか。

会社では、プレイングマネージャーとして。部下と共に部隊の目標達成のために、競争世界で戦う市場の前面に立ち、常にお客さまを意識してグループという部隊を率いていく GMを育成する必要がありました。

事業の拡大を目指すうえで、顧客のニーズに迅速に応えていく必要があり、そのためには、スピード感を持った仕事を会社大で進めていく必要があり、このためにGMに与えた新たな職務は、スピード感を持った能動的な行動でグループを活性化することを職務としました。

一般職の人はどうでしょうか。

我々の会社は技術を売っている会社です。そのことを考えれば自ずと答えは明確で、各職位の人が、その上の職位の人の仕事を担えるように努力していく必要 があります。

現状、この技術を持っていればこの仕事はできるという人は、さらに技術を磨き、その上の人がやっている仕事に手を出していくことができる仕組みと研修を行っていきました。

まとめ

企業では、戦後、高度成長に合わせ取られていた終身雇用制から、個人の力量に応じた仕事への参画を目指したジョブ型に大きく変わってきています。

このような中で、社員の技術、能力を高めるため、また、個々人がやる気をもって仕事を進める上で、重要と思われる点について事例を紹介しました。

ここでは、私が、会社で進めた“全員経営”の中で気づいた、これらを進めるうえで留意する点について捕捉します。

一つは、上位職の関与の在り方です。いくら部下がその気になっても、その上司が、まったく、環境の変化についてこられない状況では、当初の目標は達成できません。

GM、部長、本部長をいかにその気にさせるか、研修などを通じて意識を変えていく必要があります。

また、それぞれの職位の人達が一つ上の仕事を実施しようとすれば、今まで の業務をこなすだけではだめで、前述したとおり、自分で考え、判断し行動することが必要で、そのためには、考え、検討する自らの時間を持つ必要があり ます。

簡単にはいかないことは自らも経験していますが、この時間を作り出すことを、会社内全員で考え、行動することが必要であると思っています。