モチベーションをアップしたいとき

理想の自分を作るための方法-目標を見据え段階的に前進-

何かを達成するとか、一流のプレーヤーになるとか、理想の自分を作り上げるために、将来に向け、高い目標を持つことは大切なことだと思います。

では、その高い目標、理想の姿を達成するためにはどうしたらよいのでしょうか。

作家、宮本氏は、その作品の中で、目標を見据え、2年ごとにどこまで到達しておくべきかを明確にしておくことの必要性を紹介しています。

また、私がある会社の経営を担ったときにも高い目標を達成することについて、その難しさを経験しました。

社長就任早々に10年後に会社が目指すべき姿を描き、具体的な目標も定めました。しかし、ただ、10年後の姿を描き、社員にその姿を示すだけでは、目標を達成できないことを2年後に認識しました。

そして、10年後のあるべき姿を見据え、毎年度の目標をしっかり持ち、その目標を達成していくことの重要さを学びました。

今回は、宮本輝氏の作品と私の経験から「理想の自分づくりとして、目標に向け段階的に進む」について紹介します。

今は10年先の布石でなければならない

小説「優駿」は、ダービー馬に育つ競走馬オラシオンを中心に、その馬を取り巻く、生産者、馬主親子たちの人間模様を描いています。

ここで紹介する一節は、オラシオンを生んだ、北海道静内のトカイファームの牧場主の息子、博正が主人公です。

将来、牧場を受け継ぐことが決まっている博正は、今は小規模でしかない牧場を、日本でも有数の牧場にしたいという大きな夢をもっています。

ある日、博正は、日本でも最大級の牧場を有する吉永ファームのオーナーにその牧場を案内してもらい、自分でも大牧場を運営したいという夢を膨らましていきました。

そのときちょうど出会った、吉永ファームのオーナーの息子、吉永克之から、夢をいかに成就させるかということについて、博正はアドバイスを受けるのでした。

ここで紹介する一節は、博正が語った言葉です。

(博正)「結局、金がないとどうしようもないってことでしょう?」

博正は目を伏せたままそう言った。そんな博正を克之はしばらく見つめていたが、やがていたわりのこもった口調で言った。

「親父の持論は幾つかあって、中には荒っぽい自分中心のものもあるけど、俺がなるほど本当にそうだなアって感服するものもあるんだ。

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それから、いまやっていることは、常に十年先の布石でなきゃアいかんて言うんだよ。

博正くんだって、いずれはお父さんの跡を継ぐんだろう。そしたら、自分の出来る範囲で、ひとつひとつ、うちの牧場の真似をしていったらいいじゃないか。

一遍にやろうって考えたら、目の前が真っ暗になるけどさア、この二年間はこれ、次の二年間でこれっていうふうに、努力していったら、二十年たったら必ずそれだけのちゃんとした結果に結びついていくと思うよ。

俺だったらまずいい肌馬を買うよ。屑を三頭売っていい肌馬一頭を買う。ハナカゲ(ダービー馬オラシオンの母馬)みたいなのを。頑張って何とか金を工面していい種をつける。それが第一歩だと思うよ」

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博正はいつのまにか顔をあげ、克之の話に聞き入っていた。—–その驚きは、博正の体内に、希望と勇気の小さな火を点じてくれたのであった。

彼は、何かが成し遂げられそうな気がしてきた。まず何から手をつけようか。そう考えただけで、胸がわくわくしてきた。

(宮本輝著 

20年後の大きな夢に向かい、2年ごとの目標を決め、その目標をきちっと達成していくことの必要性を博正は学びました。

経営改革の冒頭での宣言

私が、土木、建築の設計コンサルティング会社の社長に就任したときの経験です。

その当時、会社の業績の先行きが悪化することが見込まれていたため、事業を立て直し、新たに成長させるためには、思い切った経営改革が必要と判断しました。

技術的に潜在能力を持っていた会社でしたが、市場が限られており、業績が停滞していました。

そこで、今ある技術を、新たな市場に売り出すことで事業の成長を進めることにしました。

持続的な成長を目指すうえでは、長期の目標を掲げ、それを社員に徹底する必要があると考え、10年後に、売上高を現状の2倍にするという目標を掲げました。

売る市場を新たに開拓できれば、成長することも可能な潜在能力を持った会社でした。

10年後の会社としての目標を定めましたが、それだけでは、社員に納得感をもってもらうことができないと考え、10年後に会社がどうなっているか、会社の売り上げ、利益規模、扱う商品、市場などについて、その姿を描きました。

そして、その会社の姿を基に、技術系の部門をはじめ、間接部門も含め各部門がそのときどのような世界になっているかを描いてもらいました。

これは、10年後に会社がどうなるか、その中で、自分が所属する部門がその時どうなっていなければならないか、自分の意識としても持ってもらう必要があったためでした。

こうして、会社の経営改革はスタートしましたが、2年ほど経って、問題点がはっきりしてきました。会社全体では目標に向かって成長していることが実感できたものの、各部門でその成長の度合いが異なってきました。

 これでは、会社全体としても、いずれ成長がおぼつかなくなるのでは、ということが懸念されました。

また、そのときの社員の意識は、「どうせ会社のトップから強い指示があるんだから、その指示に基づいて動いていればよい」というものでした。そのような意識であったため、その行動はどうしても受動的になっていました。

そして、この社員が示す受動的な行動こそが、将来の成長の足かせになる、と強く意識するようになりました。

このように、最初の2年間ではっきりしてきた課題を克服するために、新たな方策を講じることにしました。

10年後の姿を見据え各年度の目標を定める

取った手立ての中で、最も重要視した方策が、10年後の目標を見据えて各年度の目標を10年分立てることでした。

この各年度の目標は、会社の目標に合わせ、各部門でも作成しました。そして、各部門では、メンバー一人ひとりも、その目標に合わせた目標を定めることにしました。

これにより、自分が何をなすべきかが明確となり、上司からの指示を待つのではなく、自ら動いて成果を出していこうという意識を高めることを目指しました。

この各年度の目標を会社、部門、社員一人ひとりで明確にしたことにより、各年度の、それぞれの達成状況を明確にすることができるようになりました。

そして、その実績が、10年後の目標を達成するための軌道に乗っているか、常にチェックできるようになりました。

この方策により明確になった効果は2点です。

(1) 将来のあるべき姿に向けた行動

一点目は、この年度ごとの目標に対する評価を基に、遅れている部門は、次年度にどのように挽回するかなどの方策がとれるようになり、常に、将来のあるべき姿を見据えて仕事ができるようになりました。

(2) 能動的な行動

二点目は、社員が能動的な行動を取り始めたことで、これまで、どうしても眼の前に発生した課題に目が行き、いわゆる対処療法で事を処理していた姿勢を改めることになりました。

まとめ

会社にとっても、一個人にとっても、長期的な目標を立てることは重要なことと思います。

そして、目標を立てたならば、1年、2年のスパンでどこまで達成しておくかを決めておくことが大切なことと思います。

これにより、なんでもすぐに処理しなければならないという、切迫感から解放されます。

また、一歩ずつ、目標に向けて進捗していることを確認でき、もし、遅れていることがあれば、そのことも明確になり、その対処も可能となると思います。