東京は、8月17日の雨のあとすっきり晴れました。散歩がてら家の付近の 尾根緑道を夕方歩くと、射し込む木洩れ日も何かしら秋の気配でした。
木洩れ日や 秋の兆しの 尾根の道

さて、本題です。
会社で仕事をしていて、その仕事に没頭し、わくわく感を持ち、さらに仕事が終わった後に高揚感をもてるようにするためにはどうすればよいのでしょうか。
仕事の成果に見合った報酬を得ることも基本的な条件だと思いますが、それだけでは、なかなかに達成することのできない命題です。
DeNA会長の南場氏は、自らの経験として、社長を退いた後の後継者の経営のもと、社員がわくわく感を持って仕事をする姿を見て、社員がわくわく感を持つために必要な条件をその著書のなかで紹介しています。
また、私も、会社の経営を担ったときに、報酬だけでは満足しない社員の満足感向上のために、対策を講じ、社員にわくわく感を実感してもらった経験があります。
今回は、南場氏の作品と私の会社経営の経験から「社員がわくわく感を持って仕事をするための条件」について紹介します。
仕事に高揚感をもてる3条件
南場智子氏は、大学卒業後、1986年にマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社し、10年後にマッキンゼーでパートナー(役員)となり活躍していました。
その後、1999年にマッキンゼーを退社してDeNAを設立しました。
南場氏は、その後10年以上にわたりDeNAの社長として事業を拡大し、2012年6月にその社長職を、守安氏に託しました。
守安社長になってから、社内の雰囲気が今まで以上に良くなってきたことに気づいた南場氏は、そのように会社の状況が良くなる条件がいくつかることに気づきました。
次に紹介する引用は、南場氏が見た、DeNAの活動の状況と社員が高揚感を感じ、会社が成長するための条件を記した一節です。
驚いたことに、守安社長になってから、社内の結束を強めるアクティビティーが増えた。グローバルサミットに加え、全マネージャーが参加する合宿、それから社員とその家族も参加する運動会が代表例。そして部活動まで始まった。
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会社の雰囲気がすこぶる良いのは、こういった小手先のイベントではなく、「任せる」ことをさらに徹底しているからではないかと感じている。
チームの目標を達成することの喜びと高揚感を経営の中心に据えようと決めた瞬間の話は冒頭に書いたが、このことは言うほど簡単ではない。
- 全員が主役と感じ、ひとりひとりが仕事や成果にオーナーシップを感じるようなチームの組成、仕事の単位となっているか。
- チームの目標は分かりやすく、そして高揚するに足る充分に高い目標となっているか。
- チームに思い切った権限移譲をしているか。信じて任せているか。
この3点を満たしつつ、全チームの目標達成が全社の目標達成につながる組織設計をしていなければならない。実はかなりのバランス感覚が必要だ。
これらがうまくできているときは目標達成の純粋な喜びと高揚感で組織が力強くドライブされていくため、細かい点は気にしなくてもうまくいく。そして上記のうち、最も難しいのが3つ目の「信じて任せる」ということ。論理ではなく、勇気が必要だ”。
(南場 智子著 不格好経営)
自ら考え、判断し、行動する
私が、設計関係のコンサルティング会社の社長となり、すぐに取り組んだ社員意識の変革もとめた経験です。
親会社との関係が深かった会社は、仕事のほとんどを親会社からの発注に頼っていました。私が社長に就任する前に、親会社の事情により受注が急減するという状況に会社は遭遇していました。
そのような状況下で社長となったことから、事業を継続することはもちろん、さらに成長を続けるためにどうすればよいかと考えました。
「成長するためにどのような手を打てばよいか」ということで、10年先の 会社としての高い目標を掲げ、経営層と社員が一体となって進んで行こうということで、経営改革のスタートを切りました。
会社として今までにない取り組み、社員の意識の変革などに関し方策を立て事業を進めていきました。
活動を続けた結果、3年ほど経つと、その方策は効果を見せ始め、業績も向上し、多くの社員が達成不可能と考えていた10年先の目標達成を見通すまでの結果が出てきました。
しかし、その後の成長は、計画通りには進みませんでした。
なぜ、そのようなことが起こっているか、原因把握のため社員との懇談会、 アンケート調査などを実施しました。
その結果、主要な原因として以下の2点が考えられました。
① これまでは上司から仕事を与えられており、上司の指示に従った仕事をやっていればよいという受動的な姿勢であること。このために、仕事をやらせられているという意識が強く、仕事を進んでやっているという意識が低くなっていたこと。
② 本部ごとに会社の目標達成のための目標は定められていたものの、社員一人ひとりの目標については、会社の目標に対する位置づけが不明確であったこと。このために、社員が、自分の会社での立ち位置が不明確であり、会社に対し、また、社会に対しどのように貢献しているかがつかめなかったこと。
これらの検討を踏まえ、社員が生き生きと働くためには、社員が自立して働くことが大切で、そのためには、“自ら考え、判断し、行動する”ことが必要であると判断しました。
そして、このために必要な方策を立て、実践することにしました。
具体的な方策の大きな柱の一つが、社員一人ひとりに、会社の目標に連携するように目標を設定し、その目標に向かいどのように仕事を進めていくかは、自分で考えることでした。
そして、目標に向けて仕事を進める中で課題が生じれば、自らの判断で方策を考え、実行することを第二の柱として実践していきました。
もちろん、これらのプロセスの中で、上司のアドバイス、指導は当然なされるような仕組みとしました。
この方策がスタートするまでに4年ほど費やしましたが、その後の社員へのアンケート調査では、仕事へのやりがいは格段に上がっていることが確認され、その後は、その方策をいかに継続するかが課題となりました。
あとがき
会社が成長する上では、社員が、その会社でわくわく感を持って仕事に従事し、担った仕事が終われば、高い達成感を味わうことができることが必要であることを、会社を経営する中で実感しました。
会社の方針がこうだからと強制するのではなく、向かう方向に、一人一人の社員がどのように貢献しているかを、理解してもらうことも大切であることも、その中で勉強したことのひとつです。
そして、社員がやる気を持つうえでは上司の意識が大切で、南場氏が紹介しているとおり、部下に勇気を持って任せることも大切なことだと思います。






