今の仕事に疑問がある時

ポリシーにこだわり過ぎることの弊害

会社とかグループなど、どのような組織でも、目標に向け、基本的にその組織としてどのように対処していくかを、ポリシーとして最初に明確にすることは重要なことと思います。

目標達成までにはいろいろな課題が出てくるのが通常であり、このポリシーが崩れると、組織のメンバーの統一感が薄れ、その課題解決としてとる方策もその場しのぎになったりします。

一方で、ことを進めている間には環境の変化は必ず起こるはずで、あまりにこのポリシーにこだわっていると別の問題が発生します。

進めている方向が現実から離れてしまったり、メンバーの心がその組織から離れていったりしてしまう危険があります。

今野敏氏は、その著書で、ポリシーにこだわり過ぎるきらいのある放送局のリーダーが、仕事を進めるうえで、こだわり過ぎることが、逆にリスクになることを認識した例を示しています。

私も、社長として会社の経営の改革を進める中で、同じような経験をしました。

当初の方策が比較的順調であったことから、その方策を続けたことで、社員の意識の変化に気が付かず、事業に滞りが生じた経験があります。

ポリシーにこだわり過ぎると変化に対応できず

今野敏の作品“アンカー”の舞台は、あるテレビ局の報道番組「ニュースイレブン」の報道局の編集室で、ニュースイレブンの記者、布施が主人公です。

布施が嗅ぎ取った事件を編集長の鳩村をはじめキャスター、事件の捜査を担当する警視長の黒田刑事らが、さまざまな思惑を秘めながら事件を解決していきます。

ニュースイレブンは、人気のあるキャスターもいて、それなりの視聴率を稼いでいますが、最近は伸び悩みの状況にあり、編集長の鳩村の気がかりとなっています。

このため、関西から一味違った人材、栃本が、デスクのサブとして関西の系列放送局から送り込まれてきました。

報道一筋に生きてきたデスクを務める鳩村は、報道はどのようにあるべきかといったことに強い信念を持っていました。

このため、新たに来たサブが、受けを狙って視聴率をあげようとすることが気に食わず、常に栃本の意見に反対し続けていました。

その様な中で、鳩村デスクのチームで新たなスクープになる可能性のある、10年間解決していなかった殺人事件を追いかけることになりました。

新たに職場に来た栃本の影響もあり、編集室のメンバーが今までにない取り組みをし始めました。

この動きに対し、自分のポリシーを曲げることのできない鳩村は、いつしか孤独感を感じ、イラつくことが多くなりました。

チームの努力もあり、事件が解決に向かい、生き生きとキャスターが報道する場面に出会い、鳩村はこれまでの自分のやり方を反省するのでした。

あんなに気に入らなかった栃村が、今は頼もしく感じられる。

栃本のせいで、『ニュースイレブン』が変わることなど、あってはならないと思っていた。引っかき回されてたまるものかと考えていたのだ。

だが、今はおおいに刺激を受けたいと感じていた。

ほんの少しのことで、考えががらりと変わることがある。人間というのは、なんと微妙で勝手なのだろうと思う。

一貫した考えというのは必要だ。それはポリシーと呼ばれたりする。だが、それにあまりに固執するのは危険だ。変化に対応できなくなる。

特に、過去に自分が作り上げたものに固執するのはよくない。鳩村は、自分がそういう状態だったことに気づき、反省したのだ。

憑き物が落ちたような気分だった。自分で自分を縛っていたのだ。その呪縛を取り払ってみると、栃本への反感も消え失せていた。”

(今野 敏著 アンカー)

成功経験が逆に弊害に

私がある土木建築関係の設計コンサル会社の社長になったときの経験です。

そのときの会社の状況は、売り上げも低下し、一段と状況が悪化することが見込まれていました。

このため、社員の処遇も下げざるを得ず、将来への不安から社員のモチベーションも低下していました。

その状況を立て直し、成長軌道に乗せるため、いろいろ経営を見直しました。社員にも、現状の会社の厳しさを伝え、今、変革をしなければ、このまま停滞を逃れられないことも伝えました。

その様な下準備のもと、経営陣がたてた戦略に基づき、事業の立て直しを進めました。社員も、現状の会社の在り方への危機意識があったこともあり、我々の指示に基づき、一緒になって変革を進めました。

数年すると、その成果が出て利益も確実に出るようになり、社員の処遇も改善することができました。さらに、処遇の改善をきっかけとして、社員の意識を一段と変革に向けることにも成功しました。

私自身は、変革の成果が出たことで、これまでの取り組みが功を奏したことに満足していました。引き続きの成長を確実にするため、これまでと同じように、経営側が方策を立て、社員を引っ張っていくことで次の段階に入りました。

しかし、その後、上昇基調にあった業績は伸びず、停滞してしまいました。これまで社員の危機意識を糧に変革を進めていましたが、処遇も改善され、社員の意識が変化したことに気づかなかったことが基本的な原因でした。

当初の成功に満足し、環境の変化に気づかなかったものと、後で反省しました。

社員の意識が変化に気づき方策を見直すことに

社員の意識が変ってきているのではないか、ということに気づき、社員の意識調査を試みました。

結果、社員は処遇にはすでに満足し、処遇だけでは社員のモチベーションが上がらないことがわかりました。

自ら仕事に立ち向かっていくといった能動的な意識が芽生えたのでした。ただ単に経営側から、あれをやれ、これをやれといったトップダウンの方式では、社員は満足しないことがわかりました。

このため、社員のモチベーションをあげるために、社員がその仕事に参加しているということを実感できる方策に着手しました。

大事なことは、上が指示するのではなく、社員が任された仕事に関して、自ら考え、判断し行動するという、自立能動的な仕事のやり方に変えていくことでした。

社員一人一人が、今、実施している仕事が、会社のため、社会のためどのように貢献しているかを、まず考えるようにしました。

そのうえで、その仕事を任せ、自分の責任の範囲で、何か課題が出れば、“自ら考え、判断し、行動する”ことを推し進めました。

社員の意識が変化したことに気づかず、これまでの方針を継続していたために、社員のモチベーションを低下させてしまった事例でした。

事業としての成果は、まだ見えていませんが、方針を見直すことで、社員の意識が違う段階になってきたことを、社員との話し合いの中で感じています。

まとめ

ポリシーを掲げることは、組織が目標の達成に向けて一体となって努力していくうえでは大切なことと思います。

しかし、目標達成に至る過程では、いろいろな環境変化が出てくることも確かです。

その変化に対応して目標を達成するうえでは、柔軟に環境へ対応することも考える必要があります。

こだわり過ぎのために現実から離れてしまう、というリスクを意識することが必要だと思います。

また、今野敏氏が、その著書で書いている通り、成功を経験すると、なかなかにそこから抜け出せなくなることにも注意すべきと思います。