モチベーションをアップしたいとき

仕事にやりがいを見つける方法-自分の役割を認識する-

最初から自分に会った仕事についたとき、人は夢中で働くことができ、しかも実力を発揮することができるといった話題については、同じブログの「適材適所が人材の活性化の秘訣」で書きました。

一方で、なかなかに自分に合った仕事に出会うことが難しいことも確かかと思います。

しかし、このような場合でも、与えられた仕事の意義、自分の役割をしっかり認識することで興味がわき、夢中になることも多々あると思います。

作家、今野敏氏は、その作品の中で、職場が変わり、自分の役割を認識したことで、仕事にやりがいを見つけ、今まで見られなかった行動力を発揮した人の話を紹介しています。

私も、会社生活の中で、どうしてもその仕事に向き合えず、悩んでいたりする人を幾人も見てきました。しかし、その人の能力に会った職場に移ってもらうことで、生き生きと働くようになることも経験しました。

今回は、今野敏氏の作品と私の経験から「仕事にやりがいを見つける一つの方法として、自分の役割を認識することの大切さ」について介します。

やりがいを求め別の職場に異動

小説「熱波」は、沖縄の米軍基地撤去に伴う都市開発に絡んだ事件を題材にしています。

主人公、内閣情報調査室の磯貝は、沖縄の国際都市形成構想の視察で訪れ、そのまま沖縄県庁の担当部署に出向することになりました。

都市計画が進む中で、その利権に絡むべく、台湾マフィアや地元暴力団が不穏な動きを見せ始めます。

対立する台湾マフィアの抗争がピークを迎え、沖縄県は、その対策のため危機管理対策部署を新たに設けることになりました。

対策室のトップのほか、補佐官として3名が選ばれ、そのうちの一人に磯貝も選ばれました。磯貝は、他の補佐官を指名するように言われていました。

そのような中、磯貝は、同じ職場で働く職場で仲本に興味を持ち始めました。

仲本は、一日中与えられた仕事をパソコンに向き合って処理するだけで、極めて目立たない人でした。

ただひたすら自分の仕事を片付けていれば役所ではやっていける、といったことを地でいっている人のように磯貝には見受けられました。

緊急時の対応に当たらなければならなくなったときに、違う立場を与えられた仲本がどのようにふるまうか、公務員としての今の自分の立場に疑問を持っていた磯貝は、自身を見つめる意味から、補佐官の一人に中本を推薦しました。

“比嘉(磯貝の上司、沖縄振興の責任者)のいた通称補佐官室には、磯貝を含め、三人の職員が集められた。一人は島袋。三十代前半で日に焼けたがっちりした体格の男だ。

もう一人はC推進室で磯貝の隣にいた仲本だった。磯貝が比嘉に言って吸い上げたのだ。

仲本に違う立場を与えたらどうなるか興味があった。というより、磯貝は自分の変化を検証してみたかったのだ。

典型的な下級役人が、立場を変えてやることによってどう変わるのか?あるいは、変わるとは限らないのか?自分は本当に変わったのか、変わり得るのか。

仲本の変化を見守ることで追体験できるような気がしていたのだ”

出典:今野 敏著 熱波

役割を認識することでやりがいを見つけ実力を発揮

那覇での台湾マフィアの抗争は、時間とともに拡大し、沖縄県の警察部隊だけでは対応が難しい状況になりました。

そのような緊急事態の緊迫化の中で、磯貝の事前の評価を覆し、仲本ははっきりと自分の意見言い、その意見が事態解決のカギを握るようになりました。

ここで紹介する一節は、仲本が、そのやる気を示した場面です。

“「内閣官房が警視庁から助っ人を送るといって言っています」

比嘉(磯貝の上司)は、机に腰を乗せ睨むように磯貝を見ていた。威圧的な目だが、そういう目をしても責めているわけではないことを磯貝はすでに知っていた。考えているのだ。苦慮している。

そのとき仲本が言った。

「喜んで受け入れましょう。相手がヤマトでも力を借りるときは借りる。自立とはこの際関係ないでしょう。非常事態なのです」

比嘉は驚いたように仲本を見た。磯貝も驚いていた。仲本がこれほどはっきりと自分の意見を言うとは思わなかった。

言われたことだけを淡々とこなす、そういう男だったはずだ。やはり立場を変えてやることで、彼も変わった。誰でも自分の意見を持っている”

出典:今野 敏著 熱波

仕事の中で自分の役割を明確にすることが大切

私が、ある土木建築設計コンサルティング会社の社長をしていたときに出会った、ある大きな部署に所属していた30代後半の社員の話です。

その部署は、常にいくつかの大きなプロジェクトを抱えていました。

このため、彼に与えられた仕事はどうしてもプロジェクトの一部となり、全体がなかなかに見えにくい状況でした。

自分が全体の中のどういうことを担っているかがよく見えず、そのことに対し常に不満を抱えていました。

そのため、上司の評価も上がらず、それがまたその社員を悩ませる原因でした。

あるとき、違う部署で小さなプロジェクトを立ち上げることになり、その社員の技術が生かせることもあり、思い切ってその人を責任者の一人として、そのプロジェクトに異動してもらいました。

数か月が過ぎ、様子を聞くと、与えられた仕事ばかりでなく、他の業務にも手を出すようになり、今までには見られない積極的な姿勢で仕事をしているとの話を聞きました。

本人も、いたくその職場に満足している様子で、私にもお礼のメールが届きました。

このように、技術はあるものの、自分とその職場とのミスマッチが、本人のやる気をそい

でしまうことはよくあるようで、これもその一例かと思います。

同じ仕事の中で自分の立場を変えてみることも大切

これまでの事例のように、会社内で職場を変える、もしくは、転職して、自分の役割が明確な職場で働くことが、現状を打破するチャンスになると思います。

このように、自分が何に向いているか常に問いかけ、仕事を選ぶことは大切なことですが、一方で、同じ仕事をやっていても、自分の立場を変えてみることで、本当の実力を発揮することもあります。

立場を変える意味では、今、自分が従事している仕事について、その仕事が社会なり会社にどのように貢献するか、さらに、その中で自分の役割を明確にし、納得することが必要です。

そのようにすることで、やる気が出、新たに自分の能力を高めるきっかけになることも、会社生活ではよくあることと思います。

まとめ

適材適所、よく使われる言葉ですが、「熱波」仲本氏や、私が出会った人たちのように、なかなかに適所に出会える機会は少ないようです。

そのような中で、やりがいを見つけるためには、仕事の中で自分の役割を明確にすることが一つの大切な方法であることを、事例とともに紹介しました。