仕事で行き詰った時

会社生活での困難を克服するには-会社生活43年からのアドバイス-

会社に勤めていて、やりがいを感じているときは、まったく意識することがありませんが、一旦、仕事上の困難に出会ったり、人間関係などで思い悩んだりすることが出てくると、状況が途端に変わってしまいます。

あれこれ考えてしまい、会社に出かけることが億劫となり、高じると、会社を辞めてしまおうかとも思ってしまうことがあります。

このような状況を克服するためにはどう行動し、考えたらよいのでしょうか。

今野敏氏はその「任侠シリーズ」の一冊の中で、荒廃した高校を主人公たちが、困難を克服し、立て直していく経緯の中で、参考になる話を書いています。

また、私も、若い時に従事した建設現場で、再三のトラブルなどの困難に遭遇したときに、会社を辞めるべきか悩みました。

結局、新たな活路を見つけ、やめることはせず、まずは構造物を構築することに熱中することでその状況を克服しました。

今回は、今野敏氏の作品と私の経験から「会社生活で出会う困難をいかに克服するか」について紹介します。

風紀が乱れた高校の困難を克服

小説「任侠学園」は、今野敏氏の任侠シリーズの一冊です。

このシリーズでは、やくざである阿岐本組が、経営が悪化した学校や病院の再建に乗り出し、見事、復活させるまでの悲喜こもごもの痛快談を紹介しています。

「任侠学園」の舞台は、東京の私立井の頭学院高校です。この学校では、生徒の風紀が乱れ、経営もおぼつかない状況となっていました。

その高校の立て直しを依頼された阿岐本組の組長阿岐本は早速、理事長としてその高校に乗り込み、再建に向け手を付け始めました。

若頭を務める日村は、ヤクザが高校の再建に挑むことに当初は乗り気がしませんでしたが、組長の熱心さに、自分も、先とうん立って、高校生の風紀の改善に取り組んでいくのでした。

ここで紹介する一節は、高校の再建のために毎日、高校に顔を出すようになった日村が、自分の高校時代を思い出し、なぜ自分がやくざになったかを振り返る様子を紹介しています。

翌日もまた学校だ。

そうだこれが嫌だったんだ。

日村は思い出した。毎日毎日、同じ時間に同じところに出かけていかければならない。まずそれが苦痛で学校を休みがちになったのだ。

別にいじめられたわけでも嫌いな先生がいたわけでもない。朝早起きして毎日学校に通うという行為がとてつもなく嫌だと感じ始めたのだ。

それは中学生の頃だったかもしれない。小学校の頃は何も考えずに学校に通っていたような気がする。

日村はベッドの中で、中学時代の憂鬱を再び味わっていた。おそらく、サラリーマンになっていたら、きっと今でも同じ苦痛を味わっているのだろう。

それに耐えられないからヤクザになったのかもしれない。普段男気だ我慢だと格好をつけているが、毎日会社にも通えないいくじなしだ。

サラリーマンはたいしたもんだと、本気で思う。

出典:任侠学園 今野 敏;中央文庫

日村は、このように、毎日高校に通い、高校が抱えていた困難克服に励むことに当初は、嫌気をさしていました。

しかし、荒廃した学校が立ち直っていく中で、荒れていた高校生が生き生きしていく様子に、高校に通うことに意義を言い出し、組長とともに、井の頭学院高校をよみがえらせることができました。

工事現場で経験した困難への思い

私は、若い時に土木構造物の建設所で設計業務を担当するとともに構造物が実際に施工される場面での工事管理にも参加する機会がありました。

その時に、いくつかの困難に出会い、まさに、仕事に向かうことがつらく思うことを経験しました。

私が担当した構造物は、大きなプロジェクトの一部をなすもので、そのほか別の場所で構築されていた構造物と合わせ、それぞれの構造物がしっかり構築されて初めて役に立つものでした。

構造物はほぼ出来上がってはいたのですが、最後の段階で、原因がつかめないトラブルを抱えてしまいました。

前に書いたとおり、そのトラブルを解消し、構造物が機能しなければ全体のプロジェクトが機能しない状況に追い込まれてしまいました。

原因がつかめず、その対策のための工事に着手できない状況下で、上司からは、毎日のように「見直しの設計はまだか」と罵声が飛び、請負業者からは「工期が迫っていますが、追加の工事は間に合いますか」といった心配げな質問が飛び交っていました。

原因がわからず、設計の見直しのめども立たない状況が数日続きました。

夜遅くまで原因を追究しましたが、なかなかに答えが見つからず、宿舎のベッドに入った後も考えることは一つ、「明日の朝が来なければよいのに」でした。

まさに、夜が明けて事務所に出かけることに苦痛を感じていました。

積極的な行動を取ることで困難を克服

そういった中で、何とか原因を探ろうといろいろ手がけ、もがきました。

まずは、同じような経験を持つ先輩技術者に意見を求め、また、簡易な実験をして、トラブルの現象が起こるメカニズムを探る努力を続けました。

そのようなことを繰り返しているうちに、これがトラブルの原因かなと思いつくものが見つかりました。

すぐにトラブルの解消には至らない手がかりでしたが、何か、これで救われるという気が起こりました。

困難につぶされず、積極的にその問題に対処することにしました。

この時を境に、「明日の朝が来なければよいのに」と思うこともなくなり、精神的に落ち着くとともに、トラブル解消のための方策検討に立ち向かう力が入るようになりました。

結局、その時に見つけた手掛かりをもとに、見直した設計の下で工事を進め、そのトラブルの原因を除去し、構造物は完成しました。

まとめ

トラブルを抱え、困難の真っただ中にいるときは、まるで暗いトンネルの中にいて、周りが何も見えない状況だと思います。このため、どちらに向かって良いのかわからず、気持ちだけ焦ってしまい、自分を追い込んでしまっていたのではと、後で落ち着いてから思ったものでした。

何かトラブルを抱え、会社に出ることもつらい時には、なかなかに積極的な行動に出ることが難しいと思います。

そんな時、私が試みたように、小さな手掛かりでもよいから、いろいろ人から意見を聞くなどして、原因になりそうな要因探しのための試みをするなど積極的な行動を取ることが大切であると思います。

解決の糸口を見つけられさえすれば、精神的に一気に楽になるのではと思います。

私自身は、この時、まるでトンネルの先に一条の光を見つけ、このままそちらのほうに進めばよいという確信を得ることができたことを感じたものです。

トラブルを抱え、会社に行くことに苦痛を感じる時、この一条の光を何とか見つける努力が必要とつくづく感じた現場での経験でした。