会社の経営改革

環境変化に対応し成功する方法-社長経験からの教訓-

停滞している組織が現状を打破し、今までにない高い目標を目指して変革しようとするとき、上に立つ者が最初に意識すべきことは何でしょうか。

それは、上に立つ者が現状の問題点とこれから進む方向性を明確にし、そのうえで自分たちが変わっていかなければならないことをメンバーにはっきり伝え、そのことに納得感を持ってもらうことではないかと思っています。

作家、池井戸潤氏はその著書で、低迷するラグビーチームが優勝するチームを目指すうえでは、現状をよく理解し、変化していくことがいかに重要であるかを語っています。

私も、成長が停滞していた会社の経営に参加したときに、その会社が持つ成長に向けた潜在能力を活用すれば、現状の停滞を抜き出、新たな成長を目指すことができると確信しました。

そこで、社員に対し、停滞を抜け成長を目指すうえでは、会社が、そして社員一人一人が変わることが必要であることを説き続けました。

その結果、社員も変化の必要性を理解し、成長に向け動き出し始めることができました。

今回は、池井戸氏の作品と私の社長経験から、「企業が成功するためには、企業を取り巻く環境に対応し変化していくことが大切であること」を紹介します。

優勝という成功を得るためにラグビーチームを変化させる

小説「ノーサイドゲーム」の舞台は、大手自動車メーカーのラグビーチームです。

主人公、君嶋隼人は、本社以降に背き工場の総務部長に左遷され、同社のラグビー部のゼネラルマネージャーも務めることになりました。

ラグビーには縁のなかった君嶋が、嘗ては強豪であったチームが低迷する姿を見、その復活を心に誓います。いろいろ障害がある中、チームメートほか、仲間を巻き込んでの努力が実を結び、最後には日本一の栄冠を取り戻すのでした。

ここで紹介する一節は、突然、企業のラグビーチームのゼネラルマネージャーを拝命した君嶋が、監督選任という難題に突き当たる場面です。

ちょうど、大学チームの監督を解任された柴門氏に君嶋は白羽の矢を当てました。そして、監督就任を依頼するため、なぜ柴門氏が我々のチームに必要か、手紙で柴門氏に強く訴えました。

 “わがアストロズは、残念ながらここ数シーズンに亘って成績が低迷しており、先日は、前田利晴監督がチームを去ったこと等、新聞などで報じられた通りでございます。

このチームには、練習方法や戦術、さらにはチーム環境、サポート体制、あるいは選手やスタッフについても、改善すべきところが多々あるように思えます。

いま我々に必要なのは、変化です。

アストロズがより強く素晴らしいチームになるために、また選手ならびにスタッフ全員が勝利のために一丸となれるように、改革には聖域を作らず取り組む覚悟です。

我々は昨シーズン、プラチナリーグの下位に甘んじました。しかし、いつまでもそこに常駐するわけにはいきません。必ずや力をつけ、地域のファンの皆様とともに優勝を狙えるチームになりたい。またそうなれるはずだと信じております”

出典:池井戸 潤著 ノーサイド・ゲーム

手紙を読んだ柴門氏は、君嶋氏の熱意を感じ、監督を引き受けるのでした。この後、柴門監督のもと、選手は再度日本一を目指すことに目覚め、優勝を目指し努力を期するのでした。

経営環境悪化への対応のため社員の意識変革を目指す

私が、土木、建築関係の設計コンサルティング会社の社長に就任した時の経験です。

私が経営に参加した時は、商品の売り上げが停滞し、また、顧客も限定的で、現状のままでは成長の見込みが見通せない状況でした。

一方で、技術的には業界の先端を行くものもあり、これまでの顧客の枠から出て市場を広げる能力は十分ありました。

そして、顧客のニーズに合う商品の開発、営業方法を変えれば、十分事業を拡大する能力を有している会社であることを自分自身は確信していました。

そこで、全社員に対し、現状を抜け出し、継続的に成長することを目指す、と宣言しました。

現状を見ると、部門の縦割りのため自由度の無い組織であったり、技術部門との連携の無い営業部門であったり、見直しすべき課題は多くありました。

その中で、まず手を付けたのが、会社が変わろうとする中で、社員一人一人が、“変化することに挑戦する”ことを意識する会社になることでした

社員が変化し始めたことが成功への第一歩

“変化することに挑戦する”ことを浸透するうえで気を付けたことは、変化することの必要性とその理由を社員に対し話し続けることでした。

気を付けたことは、一度話をすれば理解してもらえるとは到底思えず、繰り返し社員に話し続けることを意識しました。

それでも最初のころは、何を言っているかといった意見が大勢を占めていました。「今までそんなことをやったこともないし、すぐにこけるに決まっている」「社長が気まぐれでやっていること。お手並み拝見」といった意見が対話集会でも出ていました。

しかし、1年たち、会社の業績が予想以上に上向いてくると、社員の意識もだいぶ変って

いきました。

変ることで、お客様に対する姿勢も普段の業務でも社員は積極的な行動を取るようにな

り、お客様の数も増え、成功体験を感じることができるようになりました。

このような経験をすることで、自分たちの商品がより多くのお客様に活用してもらえる、といった自信となったようです。

この賞に社員の意識が変わったことで、会社の業績も上向きになりましたが、さらに良いことは、社員の多くが生き生きと働くようになったことでした。

変化することを厭わず前に進むことで、逆境を克服し、会社も社員も成長することができました。

まとめ

現状から打破したいとき、トップに立つ人が考えることは、これまでの会社のやり方、社員の意識のあり方をしっかり見つめ、改善すべき点を明らかにすることが第一。そして、改善するために、変化の必要性を社員に意識づけることだと思います。

変化の必要性を社員に意識づけするために必要なことは2点あります。

一点目は、社員に、なぜその変化が必要なことであるのかを理解してもらうことです。

二点目は、社員に理解してもらうためのトップの行動です。理解させることはなかなかに難しく、反論する人も出てきます。

その反論にもくじけず、前に進むうえでは、変化することで成長を実感できる組織になりうるといった、ゆるぎない自信をそのトップが持つこと、そしてその組織を信じることが大切であること思っています。

変化のスピードが速く、何もしていなければすぐに置いてきぼりにされる時代です。

会社を取り巻く環境の変化をとらえ、常に変化していくことを、経営者も社員も意識して行動する必要があるのではと思っています。