会社の経営改革

組織変革に必要なリーダーの役割-会社生活43年からの教訓-

低迷する組織の経営を任されたとき、新たな成長を目指し、これまでのやり方を見つめ直し、改善すべきことに取り組むべく、組織の改革を目指すことになると思います。

このように、現状を打破し、遥かに高い目標を目指すとき、上に立つ人は何を考え、行動すべきでしょうか。

現状を打破しなければならないという問題は、毎年低迷するスポーツチームであったり、業績が伸びない会社であったりいろいろなケースが考えられます。そして、その改革が成功するためには、いずれも上に立つ人がどのような姿勢でそのことに臨むかが大切なようです。

作家、池井戸潤氏も、低迷するラグビーチームの再建に挑む主人公に、熱くチームへの思いを語らせています。そこには、メンバーに響くチームへの愛がありました。

また、私自身も、ある会社の阿波踊りチームの責任者になった時に、地元の阿波踊り競技会で優勝しようという、トップの強い意志が、チームが強くなることに必要であることを実感しました。

今回は、池井戸氏の作品と私の工場長としての経験から「組織変革のためのリーダーの役割として強い意志を持て行動することの必要性」について紹介します。

監督が示したラグビーチーム変革への取り組み

小説「ノーサイド・ゲーム」の舞台は、大手自動車メーカーのラグビーチームです。

主人公、君嶋隼人は、本社以降に背き工場の総務部長に左遷され、同社のラグビー部のゼネラルマネージャーも務めることになりました。

ラグビーには縁のなかった君嶋が、かって競合であったチームが低迷する姿を見、その復活を心に誓います。いろいろ障害がある中、チームメートほか、仲間を巻き込んでの努力が実を結び、最後には日本一の栄冠を取り戻すのでした。

ここで紹介する一節は、君嶋の改革が進んでいるものの、選手の間にそれまでにない不満が出始めていたときに、君嶋が取った行動です。

君嶋が、いろいろチームの変革を進め、しばらくたつと、選手たちに不満の声が出始めました。そこで、君嶋は、選手の声を聞くことを目的にバーベーキュー大会を開催しました、

選手の生の声を聞いた後で、君嶋は50人の選手を前に地域密着型のチームを目指し、優勝することの意義について自らの方針を語りました。

その話を聞き、新たに監督となった柴門監督が君嶋に向かって、君嶋のチームをよくしようという本気度が選手を動かす道がいない、と語っています。

君嶋はひとつ間を置き、「意義をしっかり説明しなかったのはオレの責任だ。すまん」

—–君嶋はあらためて約五十人の選手たちと向き合う。

「昨シーズン、我がアストロズの成績は低迷した。だが、成績以上に低迷したのは、観客動員数だ。—–諸君は何も思わなかったか。自分たちの声が反響するような空席のグラウンドで試合をしてきて、疑問に思わなかったか」

———-

オレの夢は、スタジアムを埋めた満員のお客さんに、アストロズの試合を見てもらうことだ——」

———-

「—–そして、われわれを応援してくれる人のために、愛してくれる人たちのために、戦うことができる。そういう関係を作りたいんだ。そういう関係の中で、ラグビーをやってもらいたい、そうなるかどうかは、選手諸君のがんばりにかかっている。今やグラウンドだけが、君たちの戦場じゃない。力を貸してくれ、頼む——」

優勝争いをするチームと、優勝するチームは違う―――かって柴門が口にした言葉は、ずっと君嶋の耳に残っていた。

その柴門は、君嶋の近くに立ち、君嶋のスピーチには一切口を挟まなかった。余計な補足をすることもない。

「何かいってくれてもよかったんじゃないか、柴門」

そういうと、

「何もいうことはない」きっぱりとした返事があった。「お前の話には説得力以上の力があった」

「なんだそれは」

「お前は自覚していないかもしれないが、チーム愛みたいなものだ。お前は本気でアストロズのことをよくしようと思っている」

「シロウトなりにな」君嶋は笑いを浮かべていった。「オレは数字のことしかわからん」

「だけど、本気だろ」柴門は、選手たちを眺めながらいった。「本気ってのは、相手に伝わるもんなんだよ。精神的な成長は、チームにとってもの凄い力になる―――――」

(池井戸潤著 ノーサイド・ゲーム)

 

優勝できそうで出来ない万年2位のチーム

ある会社の地方の工場長を務めていた時の経験です。

その地方では、毎年夏に恒例のお祭りがあり、その中で阿波踊りの出来栄えを競う大会が開催されます。

私がいた会社にも阿波踊りチームがあり、20数年の間、いつも2位か3位に甘んじており、優勝できない状況が続いていました。

ある会社のチームが毎年優勝するという状況が続いており、なかなかにそのチームに勝つことができず、どうせあのチームには勝てやしない、といったのが多くのチームのメンバーの意識でした。

阿波踊りチームの組織変革に果たしたリーダーの役割

その会社に入った年に阿波踊りチームの実行委員長を務めたことから、私も、阿波踊りに参加することになりました。

チームに参加してすぐに、メンバーが一体となって、笛、太鼓に合わせ踊る姿を見、そのチームワークの良さに誇らしさを覚えました。

自らのチームばかりでなく、他社のチームの練習状況も視察しました。その結果、これなら優勝することも出来るのでは、と思いながら、その年の大会に参加しました。しかし、結果はその年も2位でした。

あれだけチームとしてのまとまりがあり、他チームと違う華やかさも持っているのに、と実行委員長として考えさせられる結果でした。

反省会が行われ、実行委員長としてその会に参加しました。

数十人を超えるメンバーの皆が、阿波踊りが好きであることはよく分かりました。しかし、「どうせあのチームがまた優勝するのだから」といった諦めの気持ちが強く、来年どう戦うかといった積極的な意見交換はなされませんでした。

いろいろ話を聞かせてもらい、優勝を狙うためには、チームのメンバーがさらに活気をもって一つのことに取り組んでもらうことが必要と思い、最後に一言話をしました。

「阿波踊りが好きなことはよくわかった。2位に甘んじることなく、優勝を目指すことが、さらに、このチームを好きになる条件ではないか。2位に甘んじることなく、優勝を目指そう。来年、優勝した場合には、盛大なパーティーを実施する」と約束しました。

リーダーの強い意志が若手の優勝へのエネルギーに

リーダーの強い意志が若手の優勝へのエネルギーに

リーダーの強い意志が若手の優勝へのエネルギーに

翌年、練習が始まると、練習方法も変わり、熱の入っている様子が見て取れました。いつも一緒に練習に参加し、優勝パーティーの約束を忘れてはいないことを、毎回メンバーに伝えていました。

結局、その年、チームは初めて優勝を飾ることができました。優勝旗が事務所に届いた時のチームメンバーのうれしさを隠さない姿を見、その晩のお酒のおいしかったことを今でも覚えています。

まとめ

組織が低迷しているとき、あえて高い目標を設定し、それを達成しようとするときには、組織の変革が必要です。

そしてその組織変革をおこない目標を達成するためには、リーダーの役割に大きな比重があります。

まず、リーダーは、目標を達成するという強い意志を持つことが必要です。そして、その意志を行動でメンバーに示す必要があります

そのような意志と行動を示すことで、メンバーの意識が変わり、メンバーが発するエネルギーが最大化すると思います。