仕事で行き詰った時

商品販売は顧客ニーズの把握から-会社生活43年からの教訓-

商品を新たに開発し、売り出すときにすぐに顧客を獲得できれば良いのですが、なかなかに思い通りにならないことも多いようです。

その原因として考えられる一つに、その開発に従事した人たちが陥りやすい、自分の技術へのこだわりがあります。

どうしても、自分の技術に自信があると、作りたいものを売ろうとしてしまい、結局、お客様のニーズに合わず、お客様に目を向けてもらえないということはよくある例です。

この点について、作家江上剛氏はその著書で、いいものであれば売れるという意識が問題であることを指摘しています。

また、私も、海外でのコンサルティング事業に従事し、発展途上国に営業に行ったときに、同じ失敗をしました。

ある技術を売り込みに行った際に、自分たちでは地震があったものの、その国のニーズに合わないものを持ち込んだため、お客様に納得感を持ってもらえなかった経験です。

今回は、江上氏の著作と私の経験から「商品販売は、まず顧客ニーズを把握することから始まる」について紹介します。

商品販売では顧客ニーズを把握し,その上で何を作るかを考える

小説「奇跡の改革」の舞台はフィルムメーカーの日本写真フィルムの開発チームです。

日本写真フィルムが、デジタルカメラの台頭により、会社の主力製品であった、フィルム事業が消滅するという危機に出会い、その危機を乗り越えるため立ち上がった人々の姿を描いています。

いろいろ検討した結果、フィルムにとって代わる商品として、化粧品市場に打って出ることになりました。

ここで紹介する一節は、そのような中で、新規の商品開発に取り組むあるチームの姿です。

主力商品であったフィルムの売り上げが急激に減少する中、そのメーカーにとって新たな核となる商品を開発するために集まった、リーダーとメンバーの奮闘努力の様子を描写しています。

その中で、リーダーである戸越に、化粧品の先輩メーカーの社長が、商品を売るということについて、何が大切かをアドバイスしています。

“戸越はんは、いいものを作ったら売れると思っていらっしゃいませんか。あんたはんの会社は技術は一流です。他の会社と比べるまでもありませんな。せやけど売れるのは別でっせ」と言った。

「そんなことはありません」

猿橋は、冷酒のグラスをカウンターに置いた。

「せやったらええんですけどね。いいものさえ作ったら売れるというのは日本のメーカーが陥りやすい傲慢さやから。この傲慢さが、日本企業の凋落の原因の一つやと思います。

あのドラッカーも経営者の条件の第一に「なされるべきことを考える」と挙げています」

「自分がやりたいこと、何をしたいかじゃなくて、会社にとって何がなされるべきかを考えるのが成功の秘訣やと言われています。ほんまにその通りです。メーカーでいうたら作りたいもんより、何を作らなあかんかということでっしゃろね」

「私が言いたいのは、作りたいものを作っても売れへんということと、変化を問題やのうて機会、チャンスと捉えなあかんということです」

出典:江上 剛著 奇跡の改革

ここでは、作りたいものを作っても売れないこと、売るためには何を作らなければならないか、そのためには、顧客のニーズを把握することが第一歩であるということを書いています。

発展途上国のニーズを把握できず営業失敗

1970年代半ば、私が勤める会社で海外事業を本格的に始めた時の事例です。

私は、ある部門で、我々が日本で開発した技術を発展途上国にコンサルタントとして、売り出すチームのリーダーを務めていました。

どのように、我々の技術を売り込んだらよいか、これまでの知見がなく、とにかく、我々が持つ技術を取り入れてもらおうと必死になっていました。

また、日本で使われ、多くの実績を上げていた技術であれば、必ず相手国の関係者は喜んで話を聞き、採用してくれるはずだという、強い思い込みがありました。

そのようなこともあり、ある発展途上国の関係機関の技術部門に出向き、意気揚々と、我々の技術を紹介しました。

一通り説明したところ、先方から「素晴らしい技術であることはわかりました。しかし、現場を見てもらえばわかると思いますが、まだわが国では、そこまだ高いレベルの技術は必要ではありません」、との答えが返ってきました。

結局、質問もされずにその説明会を終わらせることになり、自分たちの思いだけで売り込もうとしたこと、また、現場も調べずに、説明に訪問したことを強く反省しました。

まったく、相手にされず、すごすごとその場を離れなければならなかった痛い経験でした

顧客のニーズを把握したうえでの営業が功を奏す

こちらがよいと思っていたものに対し、発展途上国の顧客がほとんど興味を示さなかったこともあり、では、発展途上国に我々が持つノウハウをいかに売り込むことができるか、原因を探りました。

関係者で集まり、その原因を探りました。

結局、我々の技術は日本で実績もあり、絶対、相手国の人は関心を持つはずといった驕った認識でいたことが、相手側の納得感を得られなかっとことが原因であることに気づきました。

相手側の技術レベルを調べず、また、ニーズも把握することなく相手国に乗り込んでいったことが根本的な誤りでした。

まさに、江上氏が言う「いいものさえ作ったら売れるというのは日本メーカーが陥りやすい傲慢さ」を地で行ってしまった結果でした。

後で、改めてニーズを調べたところ、相手国が必要とした技術は、日本で10年以上前に使っていた機器であることが分かりました。

結局、今、その国で使っている機器をいかに効率よく保守し、運用するかといった点に売り込む内容を絞り、相手国に出かけました。

顧客に我々の強みを話すと、先方は、日本で実績のある効率良い保守管理に強い関心をもちました。最終的に、設備の保守、運用の効率化といったテーマでコンサルティングをすることとし、支援していくことになりました。

営業が成功したのは、自らの傲慢さを捨て、顧客ニーズの把握に努めた結果でした。

まとめ

お客様に商品を届けるということの要点は、まさに、自分が売りたいもの、作りたいものならば、必ず顧客は買うはずといった、傲慢さを捨てることであると思います。

そして、売って出ようとする市場、顧客のニーズを把握し、そのうえで何を作ったらよいかを考えることが重要だと思います。