モチベーションをアップしたいとき

部下にやる気を出させる上司は“低い姿勢”で対応する

前のブログでは、上から目線で部下に対し物を言う、もしくは上から目線で考える上司が部下からの信頼を得ることができないこと。そして、そのような人が陥りやすいこととして、集める情報には偏りが生じ、広い視点からの情報を集められずに、判断を間違える事例も紹介しました。

今回も、部下にやる気を持って仕事をしてもらうための上司の姿勢のあり方について紹介します。

宮城谷氏は、その著書の中で、つねに人より低い姿勢で立ち居振る舞うことを意識することの大切さを述べています。作品の中で周囲の人に対し、常に低い姿勢で対応する主人公が、徳の高い人物との評価を得、多くの人が主人公のもとに馳せ参じる様子を描いています。

また、自分が部下を持ったときに、その人の話していることをよく理解できなかったことがあり、部下との関係がまずくなったことがありました。

これらの状況がなぜ起こるかよく考えてみると、上から目線で話をしたり、上から目線で話を聞いいたりし、低い姿勢で部下に対応することをしなかったことで、部下の言っている本質がつかめなかったのではと思っています。

今回は、宮城谷氏に作品と私の経験から「部下の信頼を得、やる気を出してもらうためには上司は、低い姿勢を意識した高度が必要」について紹介します。

姿勢を低くできる人に人望は集まる

この回も「草原の風」からの引用です。

宮城谷氏著の「草原の風」の舞台は、紀元前6年から57年の中国で、主人公は、漢の高祖、劉邦の後裔であり、後漢を起こし、後に光武帝と称される劉秀です。

秦の国が滅び、その後の乱れた世の中で王莽が帝王の位につきました。しかし、徳のない、王莽の統治下で、天下は一層乱れ、各地で反乱の火が立ち起こりました。

そのような中、劉秀も国内の安定を求め、天下統一のための戦いに出陣します。

漢の後裔であり、また、徳の高いことが知れ渡った劉秀のもとには、各地からその徳を慕って、一族を連れ人材が集まってくるのでした。

その中の一人、後の戦いで戦果をあげる耿純が、劉秀に従うことを願って、ある地で劉秀の一隊が来るのを待ち受けていました。

ここで紹介する一節は、耿純が、劉秀と出会い、その人物に触れたときの場面です。

 邯鄲で劉秀の到着を待った耿純は、さっそく面謁した。劉秀は腰と辞の卑(ひく)い人であった。

—–こういう人が、春陵の劉氏にいたのか。

その容儀の佳さに耿純は感動した。すぐにおもったことは、

—–この人は劉邦に似ている。

ということであった。しかしそうおもった直後に、

—–いや、劉邦と項羽を合わせると、こういう人になる。

と、考え直した。劉邦の行儀の悪さは周知のことで、特に儒者を罵倒した。戦えばかならず勝った項羽には、そういう学者ぎらいの癖性はなかったが、つねに人とものごとを上から視たため、洞察力が育たず、そのため認識が浅く予知が弱かった。

人格に構えがあるとすれば、劉秀の構えの低さと大きさはどうであろう。こういう姿勢を保てる人はほとんどいないといってよい

(宮城谷 昌光著 草原の風)

この一節は、人を引き付ける魅力とは、“位が高い人こそ、目下の人に対して自分の姿勢を低くし、礼儀をわきまえて接することが必できる人材”であることを端的に表しています。

上から目線では部下の心を捉まえられず

私が40代のときに、所属する部門で、新たに海外事業を展開することになりました。その事業のグループのマネージャーを務めていたときの経験です。

事業の開始にあたり、多岐にわたる課題を解決するため部下から意見を聞き、判断の参考にしようとしましたが、マネージャーとしてどのようにすれば部下の本心を聞くことができるか、悩むことがありました。

一つの事例が、各メンバーのポストをどのようにするかといったことでした。

その事業は、新たに展開するということで、その事業に興味をもった、やる気のある若い人たちが、予想以上に集まってくれました。

せっかく集まってくれたこともあり、若い人たちのやる気を削がないように、どのようなポジションに、それぞれの人をつけるかが、最初の私の大きな仕事となりました。

自分が考えたポジション計画をもとに、一人ひとりのメンバーの関心事などを参考に、ポジションを決めていきました。どちらかというと、こちらの意見を相手に納得してもらうような聞き方になっていました。

このように、一応はメンバーの話も聞き、希望に配慮したつもりでしたが、仕事を始めてしばらくすると、うまくポストにはまった人もいれば、そのポストの仕事が合わず、グループを去る人も出てきました。

せっかくそれなりのポストの就いてもらっても、事業から離れる人が出てくる事態にどのように手を打つべきか悩みました。

職位が上であるほど低い姿勢を意識した行動が必要

せっかく集まって来てくれた人材が辞めていくといった問題を抱え、なぜ彼らが離れていったのか、周りの人に率直な意見を求めました。

その結果、部下の人たちが本当にやりたいことと、私がその部下に期待したこととが合っていなかったことが基本的な原因だとわかりました。

十分、話を聞いたつもりでしたが、やはり、ほんとうのところまでは聞くことができませんでした。

結局、上司から示されたポジションでもあり、部下から見れば、上の人との職位には歴然とした差があり、水が下から上には流れないように、部下の人たちも本心を話すことができなかったと思いました。

意識して部下の話を聞こうとすれば、その人の立場まで自分の目線を下げ、少しでも話がしたくなるような姿勢が、上に立つ者は必要であることをそのとき学びました。

その後、組織の上に立つようになった時には、極力目線を下げるなど自らの姿勢を下げることを意識し、部下の話を聞くよう努力しました。

そのような姿勢を保ち、行動することで、部下からの信頼も勝ち得ることができ、部下のほうから話しかけてくれるなど、部下の行動も前向きな姿勢がみられるようになりました。

自らの姿勢を低くすることで、部下からの信頼を得、部下もやる気を持って仕事に励んでくれることを経験しました。

まとめ

会社をはじめ、組織ができると、上司と部下の関係ができ、上司、部下の関係で話をするときは、どうしても部下には本心を話しづらいところがあります。

これは、職位の上下があり、これだけで水が下から上には流れないように、部下には本心から意見を言うことが難しい状況になっているのだと思います。

上司が、部下から意見を聞き、情勢を正しく把握するうえでは、つねに聞かせてもらおうとする姿勢が大切で、上から目線をとなっていないかを意識し、目線を下げ、姿勢を低くする意識を持って聞くことが重要と思っています。

このように、上司が姿勢を低くすることで、部下は、自分の意見を聞入れもらえたこと、仕事にその意見が反映されるという意識を持つことができると思います。

そして、そのような関係を築くことができれば、部下からの信望も高まってくるとともに、部下の行動もやる気を持ったものになるものと思います。