せっかく仕事するなら、そこにやりがいを見つけて、生き生きと働きたいと思うのは、だれもが願うことだと思います。
一方で、上司から指示されたからやらざるを得ない仕事をしていても、仕事がおもしろくないばかりでなく、仕事が終わっても達成感を全く感じられないのではないでしょうか。
では、どのようにしたら、モチベーション高く仕事ができるようになるのでしょうか。
昨年7月のブログでも「働く喜びを求めて」と題して、生き生き仕事をするためには、自ら能動的に行動することが大切であることを書きました。
今回は、自分の仕事へのかかわりという視点から、モチベーションを上げ、わくわく感をもって仕事をおこなうために考えなければならないことについて紹介します。
作家、永井紗耶子はその作品「商う狼」の中で、その答えのヒントを紹介しています。
また、私も、会社の社長を務めていたときに社員にわくわく感を持ってもらうためにいろいろ考え、方策を立て、実行する中で、皆さんに参考になると思われる事柄を見つけました。
これらの事例から、モチベーションを上げ、わくわく感をもって仕事を行うためには、次の3点が大切であると考えています。
- 自分が拠って立つ明確、簡潔な根拠(ミッション)を持っているか
- 自分が会社の中で、拠って立つ場所が明確であり、それを意識しているか
- 仕事が終わったときに達成感を感じられるか
今回は、これら3点について、永井氏の作品と私の経験から具体例を紹介します。
“己の立ち位置”をもつことでモチベーションを上げる
小説「商う狼」は、江戸時代後期の江戸商人を題材にしています。
主人公、杉原茂十郎は、甲斐の農家から飛脚問屋の養子に迎えられました。持ち前の発想力と行動力で、江戸での商人のあり方のついて大きな影響をおよぼします。
たとえば、江戸の商いの大半を牛耳る大店の店主を説得し、莫大な費用を拠出させ、商品の運送を担う菱垣廻船の運用を見直すなど、江戸の商売のシステムを大きく見直しました。
このように、江戸の市場を統一していく背景には、茂十郎が、江戸の金の流れをスムースにすることで、江戸市民の生活も良くなるはず、という固い信念がありました。
茂十郎の果敢な行動で、江戸の金の動きはスムースとなり、落ち着いたものになっていきました。
小説は、この茂十郎が江戸の商いの改革をやり遂げ、大店の店主から江戸市民までの信頼を勝ちえた立場に至るまでを主体に、茂十郎の半生涯を描いています。
ここで紹介する一節は、茂十郎が、まさに江戸の商いの改革を目指そうとしているときのことです。
茂十郎が、酒の席で兄と慕う札差の主、堤弥三郎に自分の改革に向けた考えを弁じました。その話を聞き、弥三郎が、今までの自分の生き方に疑問を持つとともに、理想の姿を口にする茂十郎に一段の魅力を感じる場面です。
(茂十郎)「兄さん、私はね、御店の旦那として奉公人に金を渡し、飢えさせないことが手前の役目だと思っているんです。そして同時に、私には叶えたいことがあるんですよ」
茂兵衛(茂十郎に名前を変える前の名)は傍らに置かれた焼き茄子を口に放り込み、ほろ酔いで満面の笑みを浮かべた。
「出世したいって話だろう」
「それもありますけど、それは手段にすぎません。私はね、商人としての誇りが欲しいんですよ」
弥三郎は意図を掴み損ねて首を傾げた。茂兵衛は杯をぐっと呷ると、弥三郎を真っすぐに見据えた。
「空きっ腹を抱えて粋がるだけの矜持じゃない。金を稼ぐことは恥などではない。稼ぐことにも矜持はある。それが商人としての誇りだ。そう胸を張りたいんです」
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手代が渡した提灯を手に弥三郎は夕涼みしながら、ゆっくりとそぞろ歩きだす。
これまでの日々、与えられた札差の主という役目に邁進してきた。損の出ないよう、大店たちと上手く渡り合うよう、周りを見ながら歩いて来たけれど、はたと己の立ち位置を見失いそうになることもあった。
「商人としての誇りか」
茂兵衛の言葉を反芻する。それなりに誇りをもって、歩んできたつもりでいたが、改めて口にすると、やはり胸が熱くなる。
「面白いなあ」
大阪屋茂兵衛との出会いは、弥三郎にとってかけがえのないものになっていた。
(永井沙耶子著 商う狼)
茂十郎は、金のことをいうのは恥であるという時代に合って、金こそが世の中をスムースに動かす手立てであるという、確固たる信念を持って行動していました。また、そのことに誇りさえ持っているのでした。
一方で、茂三郎の話を聞いた弥三郎は、自分の今までの大店店主としての立ち位置が不確かであったこと、そして、働くことの意義を持つことの大切さを考えるのでした。
給与はモチベーション向上の第一歩
私が土木建築関係のコンサルタント会社の社長に就き、経営改革を進めていたときの経験です。
前にも書きましたが、社長就任当時、その会社は将来的な成長が懸念され、給与もカットされるなど、社員のモチベーションは下がる一方でした。
このため、まず社長として取り組む課題として、社員の処遇を改善することがあげられていました。
処遇改善を目指したものの、その原資を稼ぐためにも、まずは会社の収支を改善することが必要で、就任当初から仕事のやり方、市場の見直し、組織の見直し、社員の意識改革など経営改革を積極的に進めました。
そのような改革を進める中で、2年ほどで会社の業績も改善され、社員の給与を上げるなど処遇を見直すことができました。
処遇も改善されたということで、社員のモチベーションも上がったのではと思っていました。そこで、社員に対する会社への満足度調査を行ったところ、思ったほどには満足度が改善されていないことがわかりました。
その原因を探ると、処遇が改善し、将来に対する不安が和らぐことによる、一義的な満足は得られたものの、仕事に対するやりがい、わくわく感が感じられていないことがわかりました。
このため、社員が生き生きと仕事に従事することができよう、組織変革の専門コンサルタントのアドバイスを得、社員を交えての仕事のやり方について検討し、手を打ち始めました。
モチベーションを上げ、やりがいをもって仕事をする
社員のモチベーションが上がるために取り組んだ方策は以下の3点です。
① 自分が拠って立つ明確、簡潔な根拠(ミッション)を持つ
② 自分が仕事の中でよって立つ場所が明確であり、それを意識する
③ 仕事が終わったときに達成感を感じる
(1)自分が拠って立つ簡潔な根拠を持つ
経営改革で、最初に実施しなければならなかったことが、経営層と社員全員の意識面の統一でした。
この意識統一については、数十人規模なら自前でできると思っていましたが、社員数は600名を超える組織であったため、スピード感も重視し、その方面のコンサルタントの力を借りることにしました。
その中で、一番に重要視したのが、今後の会社の方向性(ミッションほか)を全社員で話し合い、合意することでした。
(2)会社内での立ち位置を明確にする
会社が目指す方向性を社員全体で合意した上で取り組んだことが、社員の仕事への意欲を増すために講じた方策で、社員の会社における立ち位置を明確にすることでした。
30年以上の仕事のやり方から、どうしても上司からの指示待ちという受動的な姿勢を能動的な姿勢に変える効果も狙った方策でした。
社員一人ひとりの立ち位置を明確にするため、自分が担っている仕事が、会社の成長において、どのように貢献しているのかを社員一人ひとりが理解できるよう、仕事のやり方を変えていきました。
具体的には、会社が将来の成長を目指した掲げた目標を基に、各部門に落とし込み、その目標をさらに、社員一人ひとりに落とし込み個人ベースの目標を持つようにしました。
このようにして、社員が、会社の目標のどの部分を担っているかが理解できるようにしました。
(3)達成感を感じる
社委員一人ひとりの目標が明確にしたうえで、その目標をいつまでに達成するか、目標期日も明確にしました。
達成すべき事柄、時期が明確になったことで、社員はその仕事を終わらせたときに、やり切った、という達成感を感じるようになり、これがまた、次の仕事のやる気につながっていきました。
まとめ
会社に入り仕事をする中で、どうせならモチベーション高く、わくわく感をもって仕事をしたいものです。
そのために必要なこととして、作家、永井氏の作品と私の経験から3点をその方策として紹介しました。
ぜひ、今回紹介した自分が拠って立つものをもち、会社のなかでの自分の立ち位置をはっきりすることで、生きがいを持った仕事をしてもらえればと思っています。






