今の仕事に疑問がある時

仕事の悩みを解決する秘訣-信頼する上司に語る-

仕事をしているときに悩みを抱えることは誰にでもあることです。

上司に口やかましく仕事のことで注意され続けたり、今従事している仕事に関心が待てなかったりなど、悩む理由はいくらでもあります。

そして、パワハラ的な行為を受けたりしたときには、仕事の効率が落ちるばかりでなく、精神的にも参ってしまうことさえあります。

では、このように仕事に悩む状態になったときに、どのように対処すればよいのでしょうか。

作家、宮部みゆきは、その作品の中で、悩んでいるときの対処法の一つについて、その悩みを口に出すことの大切さを書いています。

私も、管理職になり、また、会社の社長を務める中で、仕事に悩む人、周囲の人との付き合いに悩む人に出会いました。

そのときの経験から、悩みを抱える人が、信頼している人に悩みをさらけ出すことが、精神的な落ち込みから脱却するうえで大切であることを学びました。

今回は、宮部みゆき氏の作品と私の会社生活の経験から「仕事で悩みを抱えたときには、その悩みを口に出すことが大切で、相手は信頼できる上司が最適」について紹介します。

悩みごとは口に出すことで和らぐ

小説「あやかし草紙」の舞台は、江戸時代の神田、筋違御門先にある袋物屋の三島屋で、主人公は、店の主人、伊平衛の姪の19歳になるおちかです。

三島屋では、ここ数年、百物語を続けています。

一度の語り手は一人で、店の客間で、おちかが聞き手となり、話し手と差し向かいで話を聞くことになっています。

聞いた話は、おちかの胸に収め、決して外に出さないという決まりがあり、「語って語り捨て、聞いて聞き捨て」が、三島屋の百物語の大事な決め事となっています。

ここで紹介する話「金目の猫」は、三島屋の長男、伊一郎が奉公先から久しぶりに三島屋に顔を出し、次男、富次郎と語りあう場面です。

伊一郎と富次郎がまだ10歳前後の頃に、二人が経験した奇妙な話を、伊一郎が百物語の一つとして語る物語です。

その当時、三島屋は、父親が店を開いたばかりで、金銭的な苦労や、顧客の獲得で、両親とも苦労が絶えない時期でした。

そのような状況を見聞きした伊一郎が、この先の三島屋の行く先が心配になり、その悩みから、行動も荒れてくるようになりました。

ここで紹介する一節は、その状況を見た、手習い所の師匠が伊一郎にかけた言葉です。

 (伊一郎)「おっかさんが疲れた顔でため息をついていたり、おとっつあんと八十助が金繰りのことでひそひそ相談なんかしていようものなら、背筋が寒くなって夜も寝付かれなかったよ」

で、そういう不安に耐えきれなくなると、まわりに八つ当たりをしたり、むっつり塞ぎ込んだりしてしまったわけである。

「そしたらあるとき、手習所の師匠に呼びつけられてさ、何でわたしが荒れるのか、理由を言えって問い詰められたんだ」

叱り飛ばされるのを承知の上で、伊一郎が思うところをぶちまけると、意外なことに、枯れ木みたいに老先生は得心してくれた。

—–私には商人の苦労はわからぬが、子供のおまえが先々の不安に怯えるのはわかる。

胸が塞いで辛くなったら、いつでも師匠のところに来なさい。話がしたいなら相手になるし、泣きたいなら泣くがいい。うちに帰りたくないなら手習所にいてもいい。気が済むようにしろって」

それがあの居残りだったわけである。

「説教もしないし、慰めてもくれない。師匠は何か書き物をしていて、わたしは墨を磨ってるとか、教室の掃除をしているとか、そんな感じさ」

伊一郎が話をしたいときでも、師匠は黙って言いたいことを言わせておいて、きりのいいところがくると、

—–顔を洗って、書物の一節を読み上げなさい。

「それだけだった。けど、それが効いたんだろうな。わたしはだんだん荒れなくなっただろう?」

(宮部みゆき著 あやかし草紙)

胸が塞ぐほど苦しくなるほどに悩むことがあったら、誰かに話をすることで、気持ちが落ち着くと、師匠は言っています。

そして、そのために大切なことは、信頼する人がそばにいてくれることだと、私は会社生活で学びました。

信頼する上司に悩みをぶちまけることで元気に

私が課長職を勤めていたときの経験です。

仕事ができると評判の若手社員が、現場の支店から本社の私の課へ転勤してきました。

転勤早々は、周りの社員とも溶け込み、仕事も同僚と一緒になりテキパキ進めている様子でした。

3か月ほど過ぎると、その社員の直属の上司から、最近、彼が休むことが多くなっているとの報告を受け、気にしていました。

そのうちに、会社に出てくることができなくなったこともあり、何を悩んでいるのか、直属の上司に家に出向いてもらい話を聞いてもらいました。

話はしましたが、ただ、会社に出ることがつらいという話しか聞くことができなかったということで、専門家の意見を聞くこととしました。

専門家の話を聞くと、「今の職場で悩んでいることがあるはずだから、彼が信頼している上司がいる職場に転勤させた方がよい」とのことでした。

早速、前に彼の上司であった人に相談し、その上司がいる職場に転勤してもらうことにしました。

それ以降、ときどき、その職場の上司に連絡し、様子を聞いていました。

2,3か月して連絡すると、その上司から「彼もだいぶ元気になり、皆と一緒に仕事に励んでいる」とのことでした。

その話を聞き、よかったと思うとともに、どうして、そのように彼が回復したのか、転勤してからの経緯について、その上司に話を聞きました。

すると、「しばらく様子を見ていて、落ち着いてきたところで、何に悩んでいるのか、私に話してみないか」と問いかけたところ、その悩み事を話し始めたそうです。

焦ることなく、何回かそのようなことを繰り返すうちに、彼が抱えていた悩み事を話すようになったようです。

 そして、それ以来、顔つきも変わり、元気な様子が見えるようになったとのことでした。

彼が気落ちしてしまった原因は、転勤してきた私の職場が、今まで在籍していた職場と大きく仕事内容が異なっていたこと。

また、そのような中で、周りの同僚や上司がテキパキ仕事をしているのに、自分が、なぜかおいていかれている気がしたことが原因であったとのことです。

私の職場では、そのようなことまで彼から悩みを聞くことができず、悩みを抱えたまま、気の落ち込みが増大してしまったようです。

転勤し、自分が信頼する上司のもとへ行き、自分の思いを話すことができ、その悩みからも解放されたということでした。

悩みを抱えた時は、自分一人に抱え込まず、信頼する人に、思いのたけを口に出すことが必要であることを学んだ経験でした。 

まとめ

仕事をしていると、転勤や職位が上がったときなど、今までと異なった環境のもとで、自分を見失い、自信を失い、悩むことがあります。また、社内の人との関係、とくに上司との関係で悩んでしまう人がいます。

そのようなときには、その悩みを自分一人に抱え込むことはせず、誰かに、話をしてみることがよいと思います。そして、そこで大事なことは、自分が信頼を寄せる人に話を聞いてもらうことだと思っています。

ひとりで抱え込むことはせず、悩みを口に出すことを大切にしてもらえればと思っています。