モチベーションをアップしたいとき

目標達成にはチームワークが基本-海外の営業経験からの教訓-

その人にとって重要な仕事を成し遂げようとするとき、どうしても自分の力だけでは成し遂げることが出来ないことが多くあります。そして、多くの仕事では、一人だけでは成果を上げることは難しいのが実情です。

そのように一人で事をなすことができない状況では、自分が謙虚になることで一緒になってその仕事に従事してくれる人が集まります。

そして、集まった人たちのチームワークが機能しはじめれば、そのチーワークの下で、自分が担う重要な仕事も成し遂げられるのだと思います。

今野敏氏は、その作品の中で、一つのことを成し遂げるためには、一人だけが頑張るのではなく、その任務を果たすうえで関わりのある人たちが集まり、力を合わせることが大切であることを書いています。

私も、海外でのコンサルタント事業のリーダーになり、海外での仕事を受注しようとしたときに、海外と東京に散らばるメンバーのチームワークの必要性を痛感しました。

今回は、今野敏氏の作品と私の海外での営業経験から「目標を達成するためには、チームワークが大切であること」について紹介します。

医者と看護師などとのチームワークが患者を救う

以前にも紹介した、今野敏氏の「任侠病院」からの一節です。

経営難に陥った書房や高校の再建に実績を上げた、東京に組事務所を置くやくざの阿岐本組が、今度は病院の再建に参画しました。

関西系の暴力団が、阿岐本組が支援している病院の乗っ取りを画策しました。阿岐本組を追い払うための嫌がらせとして、金で雇ったホームレスや組の構成員を患者として大量に病院に送りこみ、混乱を引き起こそうと試みました。

二日続いた暴力団からの嫌がらせも、病院の医者、看護師、事務局メンバーの昼夜を問はない頑張りにより終わらせることが出来ました。

ここで紹介する一節は、その戦いの最中に、昼夜を惜しんで医療に励んでいる多賀医師が、阿岐本組の組長に語った言葉です。

 “阿岐本があくまでもにこやかに、多賀に言った。
「人を助けるのが、お医者さんてものでしょう。患者さんが殺到して、たいへんなのはわかりますが、なんとかがんばってください」

多賀が、阿岐本を見据えるようにして言った。
「人を助けるのが、医者だって? それは違う。医者は、人を診ているわけじゃない。患部や症状を診ているんだ」
日村(阿岐本組の代貸)は、思わず多賀の顔を見つめていた。
「ほうーーー」
オヤジの表情は柔和だが、さすがにちょっと驚いた様子だった。

「患部を治療し、症状をなくしたり、軽くしたりすることに全力を尽くす。それが医者だ。そして、それを検査技師や看護師がフォローし、ケアする。さらに、医療事務がそれをサポートする。わかるかい? 人を助けるのは、医者じゃない。俺はそんなに思い上がってはいない。人を助けるのは、病院なんだ。病院のみんなで人を助けるんだよ」
阿岐本は何も言わなかった。

出典:今野敏著 任侠病院

一人孤軍奮闘している多賀医師が語る「みんなで人を助けるんだよ」という言葉は、緊急時にことにあたるときのチームワークの必要性を、見事に言い表しています。

海外と東京間の相互の思惑違いでチームワークに乱れが

会社の私が所属する部門で、新たに海外でコンサルティング事業を始めることとなり、私がそのリーダーについたときの経験です。

海外でコンサルティング事業を始めようと思っても何から始めてよいかわかりませんでした。このため、我々が持つ技術でどんなことが出来るか、海外のニーズを探ることから始めました。

当初は、出張ベースで情報集めを行っていましたが、効率が悪いこともあり、東南アジアのある国に数名の技術者を派遣し、相手国のニーズを探り始めました。

彼らは、何としても案件を作り出そうという意識が強く、前のめり的に各国の関係者にあたっていきました。

海外の駐在者からのニーズを聞き、日本国際協力機関(JICA)をはじめとした国内の関係機関と相談し、案件に仕立てていくのが、東京にいる我々の役目でした。

しかし、海外で集めてくるニーズは、すぐには案件として成立する可能性が低いものが多く、なかなかに関係機関に納得してもらい、案件にすることが難しい状況でした。

一方、海外の駐在員から見ると、案件が成立しないのは、東京側の努力が足りないということになり、海外と東京の双方でいがみ合うことが多くなりました。

相互に敬意を払いチームワークを機能させることで目標達成

海外のニーズを掘り起こすのは、やはり海外駐在者の仕事ということですっかり任せていましたが、この点に問題があることに気づきました。さらに、東京側もただ海外の話を聞いて関係機関に相談に行くという戦略の無さがはっきりしました。

このため、私が海外と国内のチームワークが機能するように留意したことは、海外のメンバーの意気込みを生かすことでした。

現地で汗をかいて作り上げた案件を東京側で検討に時間を掛けすぎてしまい、案件立ち上げの機会を失い、現地のやる気を低下させてしまうことも、チームワークが機能しない原因のひとつでした。

このため、案件形成の最初の段階では、海外駐在者の意見を聞いたうえで東京側が戦略を立て、同じ目標に向かって行動することを目指しました。その戦略に沿い、双方の役割を明確にし、責任の所在をはっきりさせました。

そのうえで、国外での活動については、駐在者にほぼ任せ、プロジェクトになりそうな案件については、相手国関係者の考え方などを盛り込んだ内容を逐一報告してもらうようにしました。

国内側では、海外から報告された案件については時間をかけることなく、国内のJICAなどの関係機関に提案に行き、案件成立に向け協議を進めるという体制を作りました。

このように、海外にいる技術者と我々東京側に技術者の連携が進み、チームワークは機能するようになり、徐々に案件受注に結び付くようになりました。

心配していた海外にいる人たちのモチベーションも、案件受注という成果が上がることで向上していきました。

まとめ

任侠病院の医者が語るように、自分が頑張っている、という思い上がりを捨て、関係する皆で事に当たっているという意識を持つことがチームワークを機能させるうえで大切なことであると思います。

そして、チームワークが機能しはじめることで、最終的にはよい結果を生みだすことができるのだと思います。

良い成果が出ることで、そこに働く人たちのモチベーション一段と向上していくことになります。