モチベーションをアップしたいとき

組織の一体化のために-会社経営10年からのアドバイス-

ある大きな目標を掲げて、会社なり組織が活動を開始し始めたとき、組織が一体化していることで、目標の達成も確実となり、また、そこで働く人たちのやりがいや達成感も向上します。

では、組織が一体化するために必要なことはどんなことでしょうか。

会社のトップが一人でがんばって、社員に号令をかけ通していても、社員がその気になっていなければ、目標の達成は難しくなります。

やはり、社員が進むべき方向を認識し、自分がその目標に向けて何をやるべきか理解していることが大切であると思います。

司馬遼太郎は、その小説「坂の上の雲」の中で、ロシア海軍のトップが、水兵の戦意を高めるためにとった行動を紹介しています。その中では、乗組員一人ひとりは、自分がなにをやるかを意識づけることの大切さを描いています。

私も、会社の社長になったときに、社員一人ひとりのモチベーションを上げるためにどうすべきかいろいろ施策を進める中で、社員が自立することの大切さを学びました。

今回は、司馬氏の小説と私の社長経験から、組織が一体化するためにと題してお送りします。

戦略目的を水兵レベルまで理解させる

小説「坂の上の雲」は、司馬遼太郎の代表作で、皆さんもよくご存じの小説家と思います。

明治維新後、日本が近代国家とした歩みだした中で、文学の世界で生きた正岡子規と、日露戦争で活躍した、秋山好古と真之を主人公にしています。

ここで紹介する一節は、日露戦争が明治37年2月に開戦となり、ひと月が立った頃の旅順港を舞台にした場面で、日本海軍が、ロシアの一大艦隊である旅順艦隊を、旅順港内に封鎖している時期のことです。

ロシア艦隊の司令官であったスタルクがあまりに消極的な姿勢から解任され、新たに、 名将といわれたマカロフが着任しました。

それまで、ロシア旅順艦隊は、ロシアが誇るバルティック艦隊が遠くヨーロッパから極東地域に来るのを待ち、2艦隊が合流し、その圧倒する戦力で日本海軍を攻撃することを考えていました。このため、ロシア海軍の司令長官であるスタルクは、港内でただじっと待つことを選択していました。

しかし、何もしないで、ただ待つだけの任務の中で、乗組員たちの士気も下がる一方でした。

そのような中、スタルクは解任され、マカロス司令長官が新たに着任しました。

すると、艦隊の雰囲気は全くスタルクのときとは異なり、兵士の士気の高い、まるで別の軍隊のようになりました。

マカロフ司令長官が示した、水兵に至るまでの乗組員に対する姿勢が、この軍隊を一変させてしまったのです。

マカロフ指令長官が、乗組員の士気向上のためにどのような姿勢をとったかをこの一節は紹介しています。

 名将というのは、士気を一変させて集団の奇跡をとげる者をいうのであろう。

海軍中将マカロフが、まさにそうであった。かれは三月のはじめに旅順に着任していらい、旅順艦隊は前任者のスタルクにひきいられていたときとは、まったくべつの軍隊になった。

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かれが着任するまで、旅順艦隊は、要塞のほうの陸軍の将兵から、

「腰抜け海軍」

とか、

「旅順の水溜りで自沈をまっているアヒルたち」

とかいったような悪口をいわれていたがマカロフは着任早々、自分の方針を全艦隊に徹底させた。

「なぜ艦隊は外洋に出られないか」

ということについては、前任者のスタルクはそれを水兵にまで教えなかった。しかしマカロフは水兵にまで教えた。

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港口水道の防御には、砲艦軍をすえっぱなしにしてこれにあたらしめる。巡洋艦はその快足を利用して打撃につかうのだ。巡洋艦はいつでも汽罐(かま)を焚いて出港できるようにせよ。」

そのような方針やら戦略戦術なりは、ふつう水兵に無関係なものとして知らされることがない。とくにロシア軍隊においてはそうであった。

ところがマカロフの統率法は、水兵のはしばしに至るまで自分がなにをしているかを知らしめ、何をなすべきかを悟らしめ、全員に戦略目的を理解させたうえで戦意を盛りあげるというやり方であった。

十九世紀が終わったばかりのこの時代、カロフがやったこのことはきわめて斬新であった。”(司馬遼太郎著 坂の上の雲 第3巻)

マカロフが示した“水兵に至るまでの戦意を高めるためにとった行動、姿勢”は、私が、社長になったときに大いに参考になるものでした。

対話による意思の統一と組織化

私が、ある土木建築関係のコンサルタント会社の社長に就任した時の経験です。

前社長から事業を引き継ぎ、将来の持続的な成長を目指すために経営改革を実行することにしました。

その中で描いた会社の未来について、社員の納得感を得るために実施したのが対話による組織改革で、特に社員の意志を統一することに力を注ぎました。

意思統一を図るため、今後の会社の方向性を明確にすることとし、ミッション、ビジョン、バリューを定めることにしましたが、その過程で一番に大切にしたことが、全社員で話し合い、それらの内容について合意することでした。

まず、最初の半年間で取り組んだのは、役員を一枚岩にすることでした。役員の個別インタビュー、顧客や取引先の声の収集、社員対象のWEBアンケートなどを行い、材料を役員全員で共有した上で、泊まりがけの合宿を行いました。

これにより、経営陣の意思統一がなされました。

続いて、部門を横断して部長以下への働きかけを始めました。部長、課長、中堅、若手の各階層の代表を集め、今後のありたい姿を合宿で討議しました。

さらに、その半年後には、全社員参加のワールドカフェを実施し、社員の意見を取り込む試みを行いました。

そのような2年間の過程を経て、ミッション、ビジョン、バリューが完成しました。社員からは、「全社員での討議は私も初めての経験でしたが、やってみてよかった。お互いを知る良い機会になりました」との声が上がりました。

会社の将来に向け、社員の意志が統一されたことを認識することができた瞬間でした。

会社目標の中で自分の立ち位置を明確にする

新たに設定したミッションのもと、売上高、利益も向上していきましたが、そのころから伸びが鈍くなってきました。

そこで、はたと気づいたのが、意識を統合するまでは何とか言ったものの、相変わらず、社員が上司からの指示待ちの姿勢が思うように改善されておらず、自ら明日をひらいていこうとする意識が浸透していない、ということでした。

要は社員が、仕事をやるのではなく、やらされていたことに気づきました。

その状態が続けば、会社の伸びはいつか止まるとともに、社員のやる気もうせてきてしまうのではということが懸念されました。

もう一度、自分がありたい姿、会社があるべき姿を、社員一人ひとりが描き、それに向かって自ら考え、行動しなければならない。それを『全員経営』と名付け、浸透に取り組み始めました」

さらに、自ら考え、行動するために、社員一人ひとりの目標が何であるかを明確にし、会社の中における自分の立ち位置を明確にすることにしました。

このようなことを続けている中で、社員も全員経営という言葉に慣れるとともに、会社への満足度調査でも、モチベーションの項目では、前回の調査結果より上がっていることがわかりました。

まとめ

組織が大きな目標に向けて動き始めたとき、組織が統一されることが必要です。

その組織統一がなされれば、目標の達成も確かなものとなり、そこで働く社員なりメンバーも、やりがいをもち、達成感を感じることができます。

組織の統一に大切なこととして2点を紹介しました。

一点目が、トップが参加し、強い意志を持って進める対話によるトップとメンバー間の意志疎通を図り、目標に向けた全員の意志を統一することだと思います。

二点目が、メンバーの一人ひとりが、目標を近いし、そのために自分がなにをなすべきかを知り、さらに、自ら考え、判断して行動していくことであると思います。

これから、一人ひとりの生産性が一段と望まれる時代になると思いますが、今回の記事が参考になればと思っています。