皆さんは、やりつけた仕事や勉強などで「もういーか、ここまでやっとけばいいだろう」、ということで、仕事、勉強をやめてしまい、後になって、なんであの時もう少し頑張って努力しなかったのかと後悔したことはありませんか。
このように、まだ努力する力が残っていたのに、もうここまでやったのだからといって妥協してしまうことはよくあることではないでしょうか。
では、あと一歩努力をするためにはどうすればよいのでしょうか。
堀場製作所設立者の堀場氏は、その著書で、問題意識を持ち、妥協を持たずとことんやりぬくことの必要性を書いています。
私も、若い時の建設現場で、構造物の設計をしたときに、同じような経験をしたことがあります。まあいいかこの辺まで考えておけばということで、設計し、構築した構造物が、実際の使用に供した際に、トラブルを発生させてしまったことがあります。
今回は、堀場氏の著作と私の建設現場での経験から「妥協することで最後にその仕事で後悔してしまう事例」を紹介します。
“こんなことでよいか“といった妥協が失敗の要因に
堀場製作所は、分析、計測機器のメーカーとして、全世界に製品を送り出しています。
その創業者である堀場雅夫氏は、自らの経験から多くの著書を出しています。
堀場氏はその著書「いやならやめろ!」で、自社で大気汚染を測定するための装置を開発した時の経験から、開発にあたっては問題意識を持ち、とことんやりぬくことではじめて成功を勝ち得ると述べています。
装置の要になる部材の開発で、会社の技術者はなかなかユーザーのニーズに合った金額を出すことができませんでした。
そのような中で、あるメーカーにその部品の製作について相談したところ、そのメーカーでは30分の一の費用でできることがわかりました。
ここで紹介する一節は、妥協せず考え抜いて良好な結果を得た前記事例と、妥協して失敗した事例を挙げ、妥協せず、とことんいろいろな方法を考えることが成功を勝ち取るうえで重要であると、堀場氏が語っている場面です。
それから、もう一つの似たようなことがあります。ガスの流量を測るためにガラス管の中に円錐状のくぼみを作って、そこへサファイアの玉を入れた装置を改良したときの話です。
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その装置は相当値切っても、七千円ぐらいしていたのです。しかし、落ちると割れたりして、時クレームが出るのです。
自宅で、割れない素材で、流量を確実に示す簡単なものはないかなと思って考えていたら、電気掃除機が目に入りました。フィルターの目が詰まると赤くなって、詰まっていない時は青の印が出る。これを利用すればいけるのではないかと閃いたんです。
そこで、それを作っている松下電器産業の協力会社に行ってみました。
「うちは実はこんなメーターが欲しいのだけれども、お宅で作れませんか」と聞いてみました。「できますよ」との答えです。
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いまままで七、八千円かけて作っても壊れていたのが、それをつけてから全然壊れなくなったのです。このときも、わが社の技術屋は「これより安くはならない」と断言していたのです。
問題意識さえしっかりしていれば、世の中に有用な物や情報はたくさん見えてくるといういい例だと思います。
逆に、死蔵してしまったケースもたくさんあります。そのとき、自分ではある程度やったつもりでも、本当の意味でとことんやり抜かず、途中で「まあ、こんなもんやな」と妥協してしまったものは、やはり成功していません。
わが社の機械も用途は無限にあって、いろいろなことを言っているのですが、その中で本当に適したものかどうかという判断は、相当な調査と労力をつぎ込まないとできません
出典:堀場雅夫著 イヤならやめろ!
どうすれば、あと一本努力をすることができるのか、堀場氏は、それをやることの問題意識をしっかり持つことが大切であると書いています。
設計者としての妥協が後悔を招くことに
ダムの建設事務所に勤務していたときの経験です。
あるダムの付帯構造物を設計することになりました。設計にあたっては、その構造物にどのような力がかかるのかとか、設計する計算方法はどの手法を選ぶのが最適かなど、多種多様なことを考える必要があります。
また、実際に使うものなので、いつまでに、いくらでという条件ももちろん付きます。
このような状況下で、まだ若い私に設計が任されたこともあり、いろいろ過去の同種の構造物の設計例などを勉強しました。
ある程度設計方針が固まった時には、工期も短くなってきており、「すでに過去に経験のある構造物でもあり、問題はないだろう」といった意識もあり、ベテラン技術者からもらった意見もあまり深く考えることなく工事に入りました。
構造物が出来上がり、しばらくたった時に、ベテラン技術者が指摘してくれた箇所でトラブルが発生してしまいました。
あの時なぜもう少し深く掘り下げて検討を進めなかったのかと後悔しましたが、後の祭りでした。
トラブルでは妥協したことが言い訳にはならず
トラブルの後、いろいろ原因を調査しました。
あと少し調査範囲を広げておけば、トラブルの原因となる箇所を見つけ、それに対する対応が取られていたはずでした。
結局、その個所を修復し、その後はトラブルが発生することはなくなりました。
物理的な原因はその通りでしたが、やはり、時間がないという中で、まあこの辺で結論を出してもいいだろうと、自分勝手に妥協してしまったことが本当の原因であったと反省しています。
慢心も妥協を呼び込む原因に
時間がないことを理由に妥協してしまったことが主な原因ですが、もう一つの理由がありました。それは慢心のなせる業であると今でも思っています。
設計を任せてもらったことから、自分なりにいろいろ過去の事例、関連する文献などを読みそれなりに自信がついていました。
そのような自信から、この構造物のことに関しては、この建設所の中では、自分がいちばんよく理解しているなどという慢心が、気づかぬうちに芽生えていたのでした。
そのような慢心から、ベテラン技術者が指導してくれた意見を軽視することになってしまったものでした。
慢心がとことんやり抜くという意識を失わさせ、自分を妥協に追い込んだ経験でした。
まとめ
ある仕事を担っているとき、工期が迫っていたり、費用面で制約があり、なかなかに良いアイデアが出てこなかったりで、まあこの辺で、と妥協してしまうことがあります。
しかし、これは、堀場氏が言う「妥協したものに成功はない」を実践していることになると思います。
悩んだ際は、謙虚な気持ちになり、とことん考え、それでもだめなら、いろいろな人の意見を聞くことで新たな解が見えることが多々あることも事実です。






