能力を高めたいとき

能力向上のための継続する努力-流アスリートからのアドバイス-

「継続は力」、よく言われる言葉ですが、忙しいサラリーマンにとってはなかなかに、継続する時間が取れないのが実態かも知れません。

しかし、お酢を飲み続けていたら、血圧が下がったとか、やはり小さなかとでも継続していればよい結果をもたらすようです。

山本周五郎はその著書で、道を究めるうえで必要かなと疑問に思う事を終生ゆるぎなく持続する根本について、主人公に語らせています。

また、一流アスリートと言われる人が必ず語る中にも「継続は力」という言葉が必ず出てきます。

私も、小さなことをたゆまず続けることで、短期では成し遂げることのできないことを達成できた経験があります。

そして、私はこれを「継続の力」と呼んで、会社の経営に参加したとき、社員にもその効能を話してきました。

今回は、山本周五郎氏の作品、王貞治氏の言葉、および私の経験から「継続は力」の事例を紹介します。

日常の瑣末な継続が道を究める

小説「四日のあやめ・油断大敵」の舞台は、江戸時代、長岡藩の柳生流の剣術道場です。その道場の師範として、5人の門人を鍛えることになった久之助が主人公です。

久之助は、5人の門人に対し、日々、刀法の稽古よりも、掃き掃除などの雑事を重んじて指導がなされていました。

そのような稽古に門人からは、不満の声が上がりますが、何とか、免許を5人に渡せるところまで稽古が続きました。

そして、門人たちに免許が渡され、剣術の奥義が書いてあるものと門人たちは期待していました。

しかし、そこに書いてあったことが「ゆだん大敵」のみであったことから、いぶかしんだ門人が、久之助になぜそれだけのことしか書いていないのかと、問いました。

ここで紹介する一節は、そのときの師範、久之助の答えです。

“容易ならぬ事を終生ゆるぎなく持続する根本とは何か、それは生き方だ。

とるに足らねと見える日常瑣末なことが実は最も大切なのだ。

言葉でも、哲学でもない、瑣末なことの端々に、大事をつかんでゆだんしない生き方、これがそこもとたちに伝える「道」なのだ”

出典:(四日のあやめ・油断大敵 山本周五郎)

 山本周五郎が説くこの引用を、「継続は力」と理解すると、これまでの経験の中で、大いに役立った言葉と理解できる気がしています。

一流といわれるアスリートも、技術を高めるためには継続することの大切さを語っています。

ここでは王貞治氏の言葉を紹介します。

何事もほどよい継続的な研鑽が力となる

私が、ワシントンDCに駐在していたときに、王貞治氏から直接伺った話です。

筋肉を鍛えるには軽い負荷で時間をかけることが必要。例えばタイヤゴムを引っ張る行動を繰り返せば、内側から筋肉がついてきて、活動に必要なパワーを発揮できる。負荷を重くしてウエイトトレーニングをする例があるが、これは野球をする上では不要なトレーニング

成果を求めすぎるあまり、つい短時間に鍛えようとし、負荷をかけすぎて長続きしないことがよくあります。

長い目で見、真の実力をつけるうえでは、“何事もほどよい継続的な研鑽が力となる”という教えだと思います。

王貞治氏の教えの実践

私が、ある工場の所長を務めていた時の経験です。

その会社では、地元在住の社員が多かったことから、 自動車通勤の人が多くいました。

そのせいか、毎年秋の健康診断では、メタボと診断され、さらには、コレステロールが高いなど、数値上も問題のある人が結構いました。

現場の工場長として、何か、健康診断の数値改善のための手立てを打った方 がよいと思い、総務部と相談しました。

その結果始めたのが、「東海道ひとり旅」です。

東京から神戸までを歩いて行くことにし、早く着いた人に商品を出そうということにしました。

実際に東海道を歩くわけにはいかず、社員に「万歩計」を用意してもらい、毎日の歩数を、そのために用意された計算表に記録してもらうこととしました。

この「東海道ひとり旅」を初めてから、所内では、朝の挨拶より先に「今日何歩歩いた」といった会話が盛んになり、出足は好調でした。

景品を伴う企画は 2,3 回で止め、自ら進んで歩くことを励行できるように、きっかけ 作りをしたわけです。

やり始めた当初は、多くの社員が参加しました。

私自身昼休みに、よく事務所の側の 川沿いを歩いていましたが、それまでは見かけなかった社員が歩いているのが目につくようになり、良いことだなと思ったことを覚えています。

その後、その会社を離れてからしばらくたって、様子を聞く機会がありました。

言い出しっぺがいなくなったせいか、それまでの盛り上がりはなくなり、継続的に歩いている人は少なくなったものの、ウオーキングに嵌った人が結構おり、一日に、1 万歩から 2 万歩は歩いているとのことでした。

そのうちの何人かの様子を聞いたところ 「ウオーキングをずっと続けている。この間、体重が 5kg 以上減り、一時は周りから 病気と間違えられた。

しかし、健康診断の結果では、今までペケがついていた項目がほとんどなくなった」という人もあり、改めて「継続は力」なりを、実感した次第です。

腰痛だって継続した運動でよくなる。英語能力も身につく。

私自身の経験です。

数ヶ月前に、ちょっと無理をして、左足がしびれるようになりました。10 年ほど前にも同じような状況になったこともあり、腰を痛めたと思い、早速整形外科で診察を受けました。

診断の結果、腰に一時的な無理をかけたことによる症状と分かり、湿布薬を処方しても らいました。

今回診察を受けた医師には、10 年前にも同じ症状になった時に診察を受け、レントゲ ン写真を撮ってもらっていました。

その時の診断で脊椎の間にある椎間板の一部が圧縮されている状況が見つかっていました。

今回も同じ個所の写真を撮ってもらいましたが、 椎間板の状況は変わっていないということで、この 10 年近く症状が進行していなかっ たことが分かりました。

先生は、私が継続して10年間水泳をしていることを知っており、その効果が出ているのではないかと話してくれました。

また、「継続は力」は健康面だけでなくとも通じる話と思っています。

英語力の強化については、自分自身の努力が欠かせませんが、この英語力を付けることにも継続が大切と思っています。

英語研修を受けている人の話を聞いたことがありますが、ほとんどの人が、英語力が上がり、さらに継続して続けたいという希望を持っていました。

研修を受けることが出来ない人も、通勤時間のほんの 30 分を英語のヒアリングに使う など、いつかはっきり成果が出てくることを私自信、経験しています。

まとめ

山本周五郎の語る「道」と考えると重い気がしますが、日常の生活の中で、こんなことを続けていても成果は出ないのではと思わず、地道に継続することで、能力を高めることができるのではないでしょうか。

まさに、王貞治氏が語る「何事もほどよい継続的な研鑽が力となる」の実践が、技術力を問わず、いろいろな能力を伸ばすうえでは大切なことであると思います。