今の仕事に疑問がある時

スピード感のある仕事が営業のコツ-会社生活43年からの教訓-

どのような会社でも、物を売るときには、売る相手、「お客様」が存在します。

そして、「お客様第一」という言葉はよく聞かれます。では、どのくらいのスピード感を持って対応すべきでしょうか。

お客様が必要としているタイミングに答えられなければ、いくらお客様のほうを向いて仕事をしているといっても、お客さまに納得してもらえないことのほうが多いようです。

堀場製作所を設立し、分析機器のトップメーカーとして業界をリードした堀場氏は、いかにお客様のニーズに合ったスピードで対応することが大事かを、その著書で紹介しています。

私も、海外の仕事で、スピード感の無い対応のため仕事を失注した経験があります。

今回は、堀場氏の作品と私の経験から「お客様の満足を得るうえでは、スピード感を持って対応することが重要」について紹介します。

スピード感のないお客様対応で取引停止に

今回も、堀場製作所創業者の堀場雅夫氏の著書「いやならやめろ」からの引用です。

先にも書きましたが、堀場製作所は、分析、計測機器のメーカーとして、全世界に製品を送り出しています。

その創業者である、堀場雅夫氏は、自らの経験から多くの著書を出しています。そして、その著書「いやならやめろ」の中で、お客さんへの対応についても苦言を呈しています。

対応のまずさから、お客様の理解を得るまでに費やすエネルギーが、すぐに対応した場合に比べ数倍となることを、堀場氏は、自分の会社での経験から例を挙げて書いています。

課題に対する回答を求められた時、だれでもパーフェクトを目指そうとすることは当然です。しかし、「完全な回答を作り上げるまでに48時間かかる。だから、二日待ってくれ」ではだめなのです。

例えば、「何かのプロジェクトができるか」を24時間以内に検討しろと言われたときには、24時間で完全な答えが出なくても、途中経過を説明するなり、「確率的に80%いけるでしょう。その根拠は—-」というように、少なくとも相手にとって意味のある情報を与えなければいけません。

完全な答えが出るまではノー・アンサーであるということは、何もやっていないことと一緒なのです

出典:堀場 雅夫著 イヤならやめろ

「お客様のスピードについていけないのは何もやっていないことと同じ」と、堀場氏は強く、スピード感のないことを戒めています。

私も、このスピード感のなさで、営業に失敗した経験があります。

スピード感がなく受注競争で敗退

私が、40歳代の後半で、ある海外事業部門のリーダーを任され、事業を立ちあげて草々の経験です。

海外事業の一環として、発展途上国でコンサルティング案件を仕掛けるために、相手国がどのようなことで困っているのかといったにニーズ把握するため、相手国のお客様のところへ出かけました。

また、ニーズが把握されたならば、どのようなプロジェクトが実施可能かについても探ることとしました。

我々が持つ技術を、その国でいかに有効に使うことができるか、何回か通ううちに、お客様の困っていることを把握することができました。その上で提案した、我々が考えたプロジェクト案もお客様の理解を得ることができました。

そこで、「今度は具体的な案件として提案書を持ってきます」と話をし、その場を引き上げました。

もうすっかり、その案件は自分たちが受注することができると思い、特に、相手からは期限の希望がなかったことから、2週間ぐらいかけて、より良いものを持っていくことにしました。

2週間ほど経ってから、体制、予算、そしてスケジュールなどを検討し、再度、相手国の関係機関を訪れました。

先方は、一通りこちらの説明を聞いてはくれましたが、最後に「この案件はもう結構です」

とのこと、まったくこちらの提案を、全く受けようとしませんでした。

毎回、あれほど熱心に話を聞いてくれていたのに、なぜ突然そのようなことを言われたのか理解できないままお客様のもとを離れました。

失注の原因、回答時期が遅れたスピード感のなさ

なぜ断られたか、その場では理解できませんでした。

しかし、その間の状況をいろいろ調べてみたところ、我々が最終提案を持っていく2週間の間に、競合する会社が、同じような提案をお客様のところに持っていき、了解を取り、仕事を始める準備まで進めていることがわかりました。

その2週間で我々は何をやっていたか。

正式な提案書を持っていく2週間前にお客様にほぼ了解を得たということで、東京に戻ってから、実施する体制、スケジュール、金額などの詳細を詰めていきました。

特に、体制については、協力してくれる会社との調整に手間取り、時間がかかってしまいました。

しかし、やるからにはしっかりしたものをと思い、最後の提案書を作成するのに2週間を要してしまいました。

結局、2週間を検討にかけてしまったこと、スピード感に欠けていたことが失注してしまった原因です

また、根本的には、頭の中に「お客様は、こちらが提案書をもっていけば、当然了解してくると勝手に思いこんでいた」ところに油断があったのが最大の原因でした。

お客様により良いものを、と製品の質を上げることばかりを考えてしまい、堀場氏の言う、相手のスピード感に合わせた、まずは80%の案を持っていくべきでした。

まとめ

お客様第一といっていても、考えなければならないことは多々あります。

品質と合わせ、価格面でも、お客様が望むニーズに合った製品をお届けすることがまずは大切です。

しかし、お客様も次の工程を考えているはずであり、その工程に乗せられない自分勝手なスピードでは、結局、買ってもらうことができず、それまでの努力は水泡に帰してしまうことが多々あります。

最後に勝利を得るまでは、お客様が本当に望んでいることを、その時間的なニーズも含め把握しておくことが大切と思います。

また、私の海外事業からの経験から得た今一つの教訓は、お客様に向き合うことの他に、同じようなことができる競合の動きにも常に目を向けている必要があるということでした。