モチベーションをアップしたいとき

まず始めることがよい結果に

新しい仕事、もしくは新しい事業を始める時など、なかなかに第一歩が踏み出せないことは多くの人が経験していることと思います。

やり始めてからのことをいろいろ考え、多くの難題が控えているのでは、と思い、どうしても一歩が踏み出せないのだと思います。

そして、しばらくたってから、自分の今いる状況を振り返って、なぜあの時決心してことを始めなかったのかと悔やむことも多くの人が経験していることだと思います。

では、どのように、事を始めればよいのでしょうか。

作家、今野敏氏は、その小説の中で、決心し、まずは始めることの大切さを書いています。

私も、海外でのある事業を一から始めることを任されたものの、何から手を付けてよいか思いつかず困っていた時に、ある人の一言がきっかけで行動を開始し、その後の事業の展開につながり、よい結果に結びついた経験があります。

今回は、今野氏の作品と私の経験から、事を始めるにあたり、悩ます、まず始めることの大切さと、そのことで事が上手く進む可能性が高いことを紹介します。

悩まず、まず始めることが重要

今野敏氏の小説「虎の道流の門」は、空手道に新たな息吹を入れるため、新たな空手の団体を立ち上げた麻生英次郎と格闘技大会で不敗を誇る南雲凱の二人が主人公です。

新たな空手道を立ち上げ、麻生英次郎は常勝軍団の総帥として名を広めていきますが、自分が目指す理想と現実の乖離に悩みを深めます。一方、苦労を重ねた南雲は、格闘技大会で連勝をつづけ、裕福に暮らしますが、その生活に満足できないものを感じています。

そして両者は、その道の頂点を極めるため、対決することになり、最後に感動の結末を迎えます。

ここで紹介する一節は、麻生が、あらたに空手道場の立ち上げを考えているものの、なかなかに、決心がつかない状況に入るときの話です。

古流の空手の型を追究する主人公、麻生英次郎は、今の空手界の主流をなすスポーツ競技としての空手の在り方に疑問を持っていました。

自分の道を切り開くため、新しい空手道の団体を創設することを考えてはいたものの、いつにするかについては思い悩んでいました。

そのような中、危篤状態の友人を見舞った際の友人からの言葉を聞き、その団体を作ることを決意したのでした。

「いいか。あんたに欠けているのは、責任感だ。そして、危機感だ。俺は病気になってはじめてわかった。人生は限られている。やるべきことがあまりに多く、時間は短い。だが、あんたはまだそれに気づいていない」

「いや僕は—-」

「まだ未熟だといいたいのだろう。だがな、いつになったら、一人前になるというんだ?いつまでたっても自信など持てない。そういうものだ。ならば、未熟なままで始めればいい。そして、初めてから技を磨き、研究を深めていけばいいんだ」

「始める—?」

英次郎は、戸惑った。「それはどういうことですか?」

「自分の胸に聞いてみろ。やろうと思っていることがあるはずだ」

黒沢が何を言いたいのかわかっていた。その思いは、沖縄から帰って、ずっと英次郎の胸にくすぶっていた。独立して新団体を作りたいという思いだ。

出典:(今野 敏 虎の道 龍の門(下)より)

こうして立ち上げた、道場は、弟子たちの活躍により、マスコミに取り上げられるまでになりました。

新規事業もまず始めることで良好な結果が

私が40歳の中ごろになったときに、ある部門の事業拡大ということで、東南アジア や中国で土木を専門とする技術者集団を集め、コンサルタント案件に進出しようと、いろいろ画策していた時の経験です。

海外でのコンサルタントは、その部門ではそれまで事業としては進出しておらず、どのように拡大策を取っていくか悩んでおり、他部門で、海外事業を始めていた先輩のところに相談に行きました。

すると、その先輩から、「どうせ社内に籠っていても何も進まないんだから社外の関係機関に出かけた方がよい」と言われ、あてもなく、日本国際協力機関(JICA)や関係する役所の国際部門を訪れ、話をしてみようということにしました。

海外コンサルティングを経験したことがない人間が行って、JICAなどの専門機関へ行っても話をしても、取り合ってもらえないだろうなとは思いつつ、これしか方策はないということで出かけて行きました。

前に進むためには、行動するしかないという思いで、思い立ったが吉日を実践しました。

海外関係機関の担当の方にお会いし、我々が持っている技術を海外、特に東南アジアの発展途上国で 活用できないかといった話を、いくつかの資料をもって説明しました。

すると、先方からは「今まさに、東南アジアの 発展途上国では、そのような技術を必要としており、目下の課題となっている」という話がありました。

渡りに船ということで、これをきっかけに、一番ニーズの高い国にその技術の専門家を、まず送ろうということで、いろいろ相談、人材選びなどをこなしていきました。

その結果、1年後にはJICA の専門家として、我々の仲間を派遣することになりました。

これを契機に、JICA,JBICとも話が進み、他の国にも専門家派遣が拡大し、その専門家派遣を契機に、関係機関との交流も頻繁となり、コンサルティング案件にも参加できるようになりました。

新たな事業を展開しようとしたときに、いろいろ検討し悩まず、まず動いてみることで、事業が動き出し、さらに事業を拡大することができた経験でした。

まとめ

新たな事業とか、何か重要なことを始めるとき、将来の課題ばかりが頭に浮かび、「ああすべきか、こうすべきか」悩む機会が多くあります。

結局、悩んでいても、事は動かず、ましてや、その重要ことをあきらめた場合には、後で後悔を伴うことになることは必須だと思います。

悩む前に、まずは一歩を踏み出すことで、物事が動き出す”ことを、今野敏氏は強く言っています。また、私自身も、まずは動きてみることの大切さを学びました。

また、動き出すことで、結果が良好なものとなることは、今回紹介した事例ばかりでなく、多くの会社生活の中で同じ経験もしました。

もし、同じようなことで悩んでいる方がいれば、時間を浪費するより、まず第一歩を。